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西谷監督が“甲子園最多タイ”の68勝目…大阪桐蔭なぜ今年も強い? 節目の大舞台で先発《154キロ右腕》平嶋桂知が「背番号1」を背負う“納得のワケ”
posted2024/03/23 11:07
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
西谷浩一は甲子園の初戦を終えるたびに必ずと言っていいほど、こう言葉を紡いでいる。
「初戦は本当に難しい」
伸るか反るか。選手個人のパフォーマンスをはじめチーム全体として機能できているか未知数である初戦には、独特の緊張感がある。
今から20年前。大阪桐蔭の監督として全国初勝利を収めてから、67もの勝ち星を積み上げた。今年のセンバツ初戦で勝てば、甲子園での通算監督勝利数が智辯和歌山の前監督である高嶋仁の「68」に並ぶ。
大記録が注目された北海戦で西谷が先発に指名したのは、エースの平嶋桂知だった。
「難しい初戦」で大阪桐蔭の背番号「1」が見せた投球
「背番号1なので、責任を持ってもらいたいという意味で起用しました」
140キロ台後半のストレートが唸り、平嶋が初回からバッターをねじ伏せる。それは、平嶋自身も意識していたことでもある。
「相手を圧倒するピッチングをしようと。『このチームのエースなんだ』と強い気持ちを持って、チームに勢いをつけられるように」
4-0で迎えた4回に先頭から3連打を許し、ノーアウト満塁のピンチに陥っても、2アウト後に味方のエラーで失点しても動じない。目の前のバッターを制圧するかの如く豪快に腕を振り、北海に貫録を植え付けた。
7回、105球を投げ4安打、7奪三振、1失点。歴史的勝利に花を添えたエースのピッチングを、西谷はこのように評した。
「ボールが暴れるところはあるが、それも長所。変化球も含めてローボールに投げてくれ、攻めのピッチングをしてくれた」
北海戦での最速は149キロ。平嶋は「スピードは意識せず、バッターだけに集中して投げた」と強調し、自らのマウンドを総括する。
「調子がよかったんで少し力んでしまいましたけど、いいピッチングができました」
力んだが、ゲームをまとめられたというピッチャーとしての成長。そして、なによりエースへの矜持が、平嶋を「大阪桐蔭の背番号1」にふさわしい男に近づける。
それは、平嶋が少年時代から抱いてきた理想でもあった。