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史上初めて“JRAの場内実況”を担当した女性アナウンサー「ファンのあたたかさに救われた」藤原菜々花26歳が語る“デビュー戦”の舞台裏
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byHirofumi Kamaya
posted2024/03/24 17:01
3月3日に史上初めてJRAの場内実況を担当した藤原菜々花アナウンサー
500件のメッセージは「怖くて開けませんでした」
ゴール後についても悔やむ。
「ゴールした直後はもう頭が真っ白になってしまって。馬の到達順が1着から5着まで競馬場の真ん中に置かれた大きいスクリーンに灯るんですけれど、灯るまでつながなければいけないところもできていなかったですね」
終わった後は「反省やマイナスの気持ちしかなかったです」。
どこまでも落ち込む気持ちをやわらげたのは、周囲からの言葉だった。
「その日競馬場内を歩いているだけでいろいろな方に声をかけていただいて、まずは『おめでとう』と言ってくださって、『聞きやすかったよ』『新鮮でよかったよ』と言葉があって、先輩からは『よく頑張ったね。すごく立派だったよ』と伝えてくださいました」
SNSにもたくさんのメッセージが届いていた。
「500件近くいただきまして、今までにこんなにいただいたことはありませんでした。ただ申し訳ない気持ちがあったので、怖くて開けませんでした」
「成長することがいちばんの恩返し」
次の日、目を通すとそこには思ってもいなかった反響が届いていた。
「肯定的なメッセージが多くて、とにかくうれしかったです。自分が想像していたのと全然違う世界がそこに広がっていたので、より頑張りたいって思いましたし、プラスの気持ちが芽生えた部分はあってファンの方のあたたかさに救われた部分がありました。家族も友達も喜んでくれて、成長することがいちばんの恩返しだと思いました」
実は藤原は、競馬をまったく知らないところからスタートし実況を担当するまでになった。しかも競馬実況は数ある実況の中でも最も難しいと言われることがあるほど難易度が高い。あたたかなまなざしは、藤原の足取りと、競馬実況の専門性を知る人々だったからかもしれない。そして女性として初めて踏み入れた挑戦への称賛からかもしれない。
裏返せば、JRAにおいて女性が皆無といってよい状況があった。また実況でそれが続いたのはなぜだったのか?
《後編に続く》