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《独占インタビュー》イチロー50歳が語る「人生最初の目標」とは?「中3で人生を左右する賭けに…」高校時代のモットーは「できるだけ練習しない」 

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2024/03/08 17:12

《独占インタビュー》イチロー50歳が語る「人生最初の目標」とは?「中3で人生を左右する賭けに…」高校時代のモットーは「できるだけ練習しない」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

Number最新号で「目標設定の大切さ」をテーマに自身の経験や考えを明かしたイチロー(50歳)

「小学生のとき、全国のレベルを見てみたいという目標を立てました。

 当時、僕らのチーム(豊山町スポーツ少年団)は全国大会に出場したことがなく、(愛知県)西春日井郡の強豪のレベルは経験していても、その先を知らなかった。

 僕はピッチャーで、チームメイトにもいい選手が揃っていました。それでも西春日井郡で4、5回、愛知県大会でも4、5回、続けて勝たなければ全国大会へは行けない。一度負けたらそれで終わりの、10連勝しなければならない大会です。結果として達成できましたが、それなりに高い目標でした」

――目標を設定したあと、そこに近づくためのアプローチをどんなふうに考えていたのでしょう。

「チームで集まれるのは週に一度、日曜日だけだったので、全体のレベルを上げるには限りがありました。あとは個人の能力を上げることしかできない。毎日の練習で、バッティングセンターでボールを捉える確率が上がるとか、飛距離が伸びるとか、速い球を速く感じなくなるとか、そういう感触を得る中で、自分の状態を測っていました。投げる方は、遠投とピッチングは毎日欠かさず、精度を高めていく訓練の日々でした」

――今日と明日、そこに小さくても変化があると考えられれば、いずれ大きな変化につながるという考え方を子どもの頃から持っていたんですか。

「当時、そこまで考えていたわけではありませんが、“コツを掴めば劇的に前進する”、そんな感触を持っていました。

 小学生のときってそんなに野球がうまくないから、何かをきっかけとして大きな前進をすることがあるんです。キャッチボールだけでは物足りなくなって、ショートバウンドの捕球を練習すると、最初はうまく捕れなくてもやがてできるようになる。さらにハーフバウンドの練習でも、コツを掴めばあっという間にできるようになる。目に見えてうまくなっている手応えを得ることが楽しくて、頑張り続けようと思えるんです。でも、ある程度のレベルになってくると、それを得ることが難しくなる。そこからは、地道な半歩を大事にできるかどうか、時には後退も受け入れられるかどうかで、後に大きな差が生まれるのだと思います」

夢のままの人は前へは進めません

――この先の目標を語るとき、「夢」という言葉もありますが、「夢」と「目標」はどう使い分けているのでしょう。

「人に期待する夢、は別として自分に目を向けると、叶わないものが『夢』ですね。だから、夢はずっと夢のままです。夢を目標に置き換えられたとしたら、それは実感として、達成したいことに近づきつつある状態ということでしょう。何かを目指して、具体的に見据えている人は、夢ではなく目標になる。夢のままの人は前へは進めません。

 僕は小学6年生のときに『僕の夢』という作文で一流のプロ野球選手になることが夢だと書いています。当時は『必ずなれる』とか『契約金は一億円』とかホザいていましたが、まだまだプロ野球選手は夢の存在で、現実味のある距離ではなかった」

――夢が目標になったのはいつ頃ですか。

「高校に入る時点では、すでに夢ではなく、かなり目標に近かったですね。そうでなければ、中3で人生を左右する賭けには出られません。高校3年生の春を終えて、夏を迎えるタイミングでは完全にプロを見据えていました」

<後編に続く>

#2に続く
《独占インタビュー》イチローはなぜ、50歳で140kmを目標にするのか「“こいつまだ現役でいけるんじゃないのか?”という状態を目指してます」

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