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ソダシ&今浪厩務員コンビは須貝尚介調教師の「配役」だった…吉田隼人&今浪隆利&須貝師が振り返る「伝説の白毛馬」に出会うまで
text by
江面弘也Koya Ezura
photograph byNaoya Sanuki
posted2024/03/08 06:00
昨年、引退したソダシと今浪隆利厩務員。稀代のアイドルホースの軌跡を証言とともに振り返る
8歳上の兄も騎手、関東で活躍してきたが…
吉田隼人は8歳上の兄、吉田豊の姿をテレビや競馬場で見てジョッキーを志した。兄が騎手になったのは吉田が小学4年のときで、5年から乗馬をはじめたが、まだ怖さがあった。しかし、兄がメジロドーベルで勝ったオークスを東京競馬場で見たとき「ジョッキーになりたい」と本気で思った。それからは乗馬にも真剣に取り組んだ。JRA競馬学校は中学3年から受けて、高校2年で合格する。
デビューした'04年は3勝にとどまったが、3年めには60勝をあげると、以後コンスタントに勝ち星をあげ、ゴールドアクターで有馬記念に勝った。派手さはないが、技術の高さはだれもが認める騎手だ。
そんな吉田が関西行きを決断したのはゴールドアクターが引退したころだった。
吉田に栗東行きを決断させた 「後悔したくない」という思い
「以前から、ローカル開催で関西馬に乗せてもらう機会が多かったんです。乗ってみると、ああ、いい馬だな、どんな調教してるのかなと思って、栗東トレセンで調教から乗せてもらいたいというのがあった」
吉田には将来は調教師になりたいという思いもあり、そういう意味でも栗東の調教法に興味があったのだが、関西に活動拠点を移せば、いままで世話になっていた関東の厩舎に迷惑をかけることにもなる。また、元来が前向きな性格ではなく、人とコミュニケーションをとるのも苦手な吉田は、苦労するだろうなという思いもあった。それでも栗東行きを決断させたのは「後悔したくない」という思いだった。