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「お父さんと競馬の話をずっとして…」横山典弘と息子たちの“微笑ましい父子関係”…武豊も「刺激を受けずにはいられません」〈56歳の誕生日〉

posted2024/02/23 11:03

 
「お父さんと競馬の話をずっとして…」横山典弘と息子たちの“微笑ましい父子関係”…武豊も「刺激を受けずにはいられません」〈56歳の誕生日〉<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

『Number』が撮影した横山典弘と息子の和生(左)、武史の貴重な家族ショット

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片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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Takuya Sugiyama

 年明けの4日から栗東トレーニングセンターで幸運に恵まれた。サブスタンドのベンチに待機していた横山典弘を武豊が目ざとく見つけ、早足で駆け寄って新年の挨拶を交わすシーンを目撃できたのだ。

 横山が調教に出たのは前日の3日からだったが、武の栗東初出勤が金杯前々日のこの日だった。

 武としては、先輩に敬意を払う当たり前の流儀を実行したのみなのだが、横山は少し意表を突かれた表情だった。しかしそれを一瞬で立て直し、ベンチから立ち上がって出迎えた。「有馬記念のお祝いをまだ言ってなかったな。いや、本当に見事な競馬だった。むしろこっちから出向かなければいけないところだったのに申し訳ない」と、彼らしい言葉で恐縮の気持ちを伝えた。

 レジェンド二人が続けた短い問答がなんともカッコよかった。

「ノリさんも、間もなく岡部さん超え(岡部幸雄元騎手の史上2位の通算勝利数に迫っている)らしいじゃないですか」

「おう。でも、どこまで頑張っても2位だからなあ」

武豊「刺激を受けずにはいられません」

 横山が生活の拠点を美浦から栗東に移してから3回目の正月を迎えた。若い頃、アメリカやフランスに拠点を移す大冒険を実行してきたのが武だが、その人が「50歳を超えてからのノリさんの思い切った行動はすごいと思います。刺激を受けずにはいられません」と、当初からリスペクトを惜しまなかった。

 短期的なものと思っていた人も少なくなかった中で、いまでは栗東のサブスタンドのベンチが横山の定位置になった。騎乗依頼仲介者を置かないのは美浦のときからの変わらぬスタイル。その場所に横山がいるのが当たり前になって、調教師が訪ねてきて騎乗依頼をする風景も栗東トレセンの朝の日常として見事に溶け込んでいる。

 現役JRAジョッキーの最年長は57歳の柴田善臣。競馬学校騎手課程の第1期生だ。'23年の新人最多勝に輝いた田口貫太の世代は39期生だから、その数字だけでも1期生の生き残りの大きな価値が実感できる。

 以下、誕生日順で並べると、2位は公営・園田競馬のリーディングから移籍してきた小牧太で、3位が2期生の横山。そして4位に3期生の武が続く形だ。昨年11月に引退した2期生の熊沢重文を含めて、この5人を「5G」(ファイブジー。携帯電話の電波の進化になぞらえて5人の爺につなげた)と、やや自虐的なネーミングでまとめていたのは武の仕業。ともかく、これほど年長の騎手が活躍し続けている時代は振り返っても過去にない。

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