酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
人的補償で移籍・甲斐野央が明るい表情で投げ込み!“テレビに映らない”西武キャンプ風景…ブルペンでのデータ改革をアナリストに直撃
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2024/02/17 11:02
人的補償で西武に移籍した甲斐野央。熱のこもった投球練習だった
昨年11月のアジアプロ野球チャンピオンシップで韓国を相手に目の覚めるような好投を見せた隅田知一郎だ。受ける炭谷とは初めての組み合わせだが「よーし!」「いい球だ!」と炭谷が感嘆の声を上げる。6年前にはいなかった新戦力に、炭谷も目を見張っているのだろう。
ブルペンの左端には、中継ぎの柱、背番号25の平井克典が投げている。多くの投手が30球程度でマウンドを降りる中、平井は50球ほどの球を投げ込んでいた。
ブルペンの左端のレーンには、弾道計測器トラックマンが設置されている。この日は、平井の投球のトラッキングデータが計測されていたのだ。
西武のアナリストに話を聞くことができた
「平井は、全然状態が上がってないという本人の申告もあったので、まっすぐの状態を見ました。まっすぐさえ走っていれば、変化球は何とかなるので、まずはまっすぐですね。まだ調子は上がっていませんが、次のクールからはどんどん投げ込んで調整してくるでしょう」
こう語るのは、平井の後ろで、投球をじっくりチェックしていた球団本部ハイパフォーマンスグループチーフスコアラー補佐で、アナリスト、ITインフラ担当などを兼務する森川佳氏だ。スポーツデータ会社、データスタジアムの出身、オリックスでも勤務し、2018年に西武に移ってきた経験豊かなアナリストだ。
ブルペンではトラックマンなど計測機器を担当し、投手にデータを提示してアドバイスを送っている。
「キャンプ入りして間無しのこの時期、トラックマンのデータでチェックしているのは、去年のパフォーマンスに戻っているかどうかですね。
取材前日(8日)は、田村伊知郎と豆田泰志の計測をしました。2人ともこの時期としては、結構いいパフォーマンスをしていたん、田村は投げた後に『今日の感覚、良かったです』と言ったのですが、豆田は『思ったよりも(数字が)出てましたね』と言った。豆田は知らないうちにオーバーワークになっている可能性もあるので、そういうところは気を付けたいですね」
「投手自身の感覚も大事にしたい」
投手から「データと感覚をすり合わせる」という話をよく聞くが、田村の場合すり合わせができているが、豆田はそれが不十分なのだろう。森川氏は「数字が出ているか?」「仕上がっているか?」だけではなく、実際のデータと本人の感覚の「差異」にも気を配っている。