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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「明日戦力外、言われるわ」「また、対戦しような」16年ドラ1→新人王も戦力外に…元阪神・高山俊が胸中激白 “盟友”坂本誠志郎との最後の会話
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2024/01/29 17:00
2016年に阪神にドラフト1位で入団、新人王も獲得した高山俊。前途洋々だったはずのプロの世界でなにが起こったのか
高山は1年目を終えたばかりで、まだチームの勝敗を背負う立場ではない。だが、悠然と構えられなかった。早くも主力の自覚が芽生え、一途すぎるほど責任感が強かった。新人王の充足感はなく、表彰状やトロフィーは千葉の実家に送った。
普段、メディアへの口数は少なく、闘志を内に秘めるが、2年目の目標を「3割20本塁打」と公言した。自ら長打力を追い求め、さらなる高みを目指していったのである。
高山の最大の長所は、天性のバットコントロールだ。難しいコースの球を難なくヒットゾーンに運び「曲芸打ち」とも称された。何よりも魅力的だったのは正確さと力強さを兼ね備えたミート力だろう。テニスラケットで打っているのかと錯覚するほど、白球を「面」でとらえ、はるか遠くまで飛ばす。
しかも、球がバットに吸いつくようなインパクトで、甲子園のバックスクリーン左にも放り込む打撃練習は圧巻だった。試合では左投手に苦戦し、内角攻めに手を焼いたが、粗削りな一面は「伸びしろ」と好意的に見られ、将来を嘱望された。
求めた「長打力」で狂ったバランス
だが、理想を追求するほど、打撃の難しさに直面した。もともと、イチローのように体重移動を生かしながら打つタイプだろう。だが、軸で回転して打とうとするとしなやかさが消え、間合いが窮屈になった。「面」で捉えていた球は「点」でしか捉えられず、試行錯誤を重ねた。2年目は不振も長引き、8月に初めて二軍に降格した。首をかしげ、違和感を漏らしたこともあった。
「どうしても、バットが下からもぐってしまう」
「自分の感覚がずれて、飛ばそうとして常にオーバースイングしてしまっていた」
やがて一、二軍を行き来するようになり、好調時の映像を見直すなど、復調のキッカケを掴もうとしたが、苦悩は深まる一方だった。光を求めて、暗闇でもがく日々が続いていた。