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「会長、すいません…」ユーリ阿久井政悟を変えた“忘れがたい中谷潤人戦”…地方のハンディを克服して“岡山県ジム初の世界王者”になるまで 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2024/01/27 17:02

「会長、すいません…」ユーリ阿久井政悟を変えた“忘れがたい中谷潤人戦”…地方のハンディを克服して“岡山県ジム初の世界王者”になるまで<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

環境の違いを克服し、“地方ボクサーの星”になったユーリ阿久井政悟。世界王者戴冠に至るまでには大きな挫折も味わった

ユーリ阿久井政悟が地方のボクサーに与えた夢

 試合の翌日、阿久井は晴れやかな顔で守安会長とともに大阪市内のホテルに現われた。いわゆる一夜明け会見というもので、世界タイトルマッチやビッグマッチに勝利した者が許される晴れ舞台と言っていいだろう。

 開口一番、「パンチはもらってないけど、自分の攻撃で体中が痛い」というセリフは、それだけ攻撃的なボクシングを展開し、かつ空振りが多かったという証だ。かつて“神の左”WBCバンタム級王者の山中慎介が技巧派で鳴らすアンセルモ・モレノ(パナマ)とフルラウンド戦った翌日、同じことを口にしていたと思い出す。

 試合後のリング上で、阿久井にチャンピオンベルトを巻いてもらった70歳の守安会長は「3度目の正直と言いますが、やっと願いが叶って良かったと思う」としみじみ語った。守安会長は1999年と2001年、地元岡山でウルフ時光をミニマム級世界王座に挑戦させて失敗。今回は実に22年越しの3度目の正直だった。

 阿久井の世界タイトル獲得は、地方のジムで活躍する選手たちに夢を与えたことだろう。「彼らに伝えたいことは?」と問われた阿久井は、少し考えてから次のようなメッセージを送った。

「地方だと経験が少ないとか、中央のボクシングを知らないとか、いろいろあるとは思う。出て行けとまでは言わないけど、そういう中央のボクシングを見たり、勉強したりすることも練習の一つだと思う。あとはビビらずに中央で試合をすればチャンスは生まれると言いたいです」

 阿久井はビビらずに挑み続け、世界のベルトを腰に巻いた。今後は世界タイトル獲得に満足せず、ラスベガスのリングも目指したいという。大きな栄光を手にし、夢はますます膨らんだ。

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