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「日本人はサイズを言い訳にしがちです」日本ラグビーに“外国人鬼コーチ”が帰ってきた…エディーさんが私に語った「ジャパンの問題点」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2023/12/29 11:08
2024年1月1日、ラグビー日本代表のヘッドコーチに就任するエディー・ジョーンズ氏。2015年以来、9年ぶりの登板となる
「クリスマスイブにNHKで放送されたドキュメンタリーを見ましたか? 彼こそは自己規定をせず、自分の可能性を極限まで広げようと努力している。なにより素晴らしいのは既成概念に囚われなかったことです。そして理想を追求する上で、トレーニングでも妥協をしない。あの肉体を見てください。彼の強固な意志が表現されています。ラグビー界にも大谷翔平のような人材が登場する可能性はあるはずです」
1990年代以降に生まれた日本人はスポーツの概念を変えつつある。大谷だけではない。バスケットボールの河村勇輝、バレーボールの石川祐希に高橋藍。彼らもまた既成概念に囚われることなく、プレーで自己表現している。エディーさんは言う。
「ラグビー界の大谷翔平を求めています。若い世代から」
なぜ日本は“脅威”になり切れなかったか
いま、エディーさんは日本代表の構想を練っているところだ。
「最初の立脚点ですが、今回のW杯の日本代表は良いチームでした。ベスト4に進出したイングランド、アルゼンチン相手に好勝負を演出したのは実力がある証拠です。ただし、上位国にとっての『脅威』にはなり切れなかった。これから実現すべきなのは『超速ラグビー』です。プレーのスピード、考える速さ、反応の速さ。すべてにおいて速さを追求していきます」
リーグワンのレギュラーシーズンは5月第1週まで。その後、プレーオフが行われるが、5月から合宿を行う予定だ。
「合宿地はこれまでとは環境を変えるつもりでいます。日本代表だけではなく、その下の日本代表Aも編成し、あらゆる選手の可能性を見極めていきます」
エディーさんは明言しなかったが、40人から50人の大きなスコッドを編成するつもりのようだ。「人事」についてはデリケートな部分だが、2023年のW杯経験者ではロックのワーナー・ディアンズ(ブレイブルーパス)、SHの齋藤直人(サンゴリアス)の名前が挙がった。
「彼らはこれから充実期を迎えることでしょう。ただし、彼らにはトップレベルでの経験が必要です。今季のリーグワンはかなり競争が激しく、いい経験を積めているはずですが、今後彼らにはヨーロッパのクラブでプレーして欲しい」
これまで海外での経験といえば、ニュージーランドをはじめとしたスーパーラグビーが想起されるが、いま、クラブラグビーの中心はヨーロッパにあるという。
「ヨーロッパのレベルの上昇には著しいものがあります。フランス、アイルランド、イングランド。W杯で優勝を狙える国は、国内のクラブが充実しています。ディアンズ、齋藤が経験を積めば、欠かせない人材になってくれるでしょう」
「京産大、早稲田大にも良い選手がいました」
リーグワンでプレーする選手たちはどうだろうか。エディーさんから挙がったのは、小柄な選手の名前だった。