酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「北京五輪きっかけで高校野球やMLBにも興味を」独立L→西武の中国出身アナリストが見た日本野球「栗山巧選手と中村剛也選手からは…」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS/Seibu Lions
posted2024/01/05 17:29
西武ライオンズの中ではどんな“データ野球革命”が起きているのか
「正直、留学したときは大学院を出てどうするかまでは考えていなかったのですが、日本のプロ野球を実際に見て、テレビでも毎日放送されるし、ああいう夢の世界にチャレンジしたいと思うようになりました」
日本の野球関係の進路を探しているうちに、中国出身の投手・劉源が、独立リーグ埼玉武蔵ヒートベアーズのトライアウトを受けることになった。そこで劉さんが通訳を務めることになったという。
「劉源投手は武蔵のトライアウトに合格したのですが、武蔵の社長の方が僕にも『一緒にやりませんか』と声をかけてくださったんです。独立リーグのスタッフは“何でも屋さん”というか、午前中に出勤して企画の仕事などをします。午後はベネズエラ人選手3人、韓国人選手1人、そして劉源選手といて、彼らの通訳やお世話をしながら、試合日は荷物を運んだり、グッズ販売の準備もしました。試合中はベンチに入ったり、電動式スコアボードがない球場ではスコアボードに数字を入れたり。何でもやりましたね」
そういう仕事をこなしてきたのだから、日本語がうまくなるはずだ。そしてシーズンオフに、埼玉西武ライオンズに履歴書を出した。
劉さんの上司にあたる市川徹球団本部チーム統括部長兼企画室長も、募集がないのに「履歴書を送りつけた」経歴の持ち主だが、劉さんのときも募集はなかった。しかし……。
「市川さんから『では、1回会いましょうか?』となって、当時の事務所で市川さんと広池浩司球団本部副本部長兼一軍ディレクターと話をして、しばらくして『もう一度事務所に来てほしい』と連絡があって、入団が決まりました」
コーチや選手とコミュニケーションを取って
アメリカや韓国出身であれば、通訳的なことも含めた仕事が想定できるが、NPBには中国出身の選手はいない。劉さんは純粋にアナリスト、バイオメカニクスの専門家として西武ライオンズに入団した。そして球団にとって劉さんは、外部から球団職員として採用した最初のアナリストだった。
上司の市川徹部長は当時をこう振り返る。