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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥とのスパーリングは「DNAに刻まれるヤバさ」…勅使河原弘晶33歳が振り返る、怪物との殴り合い「僕は尚弥選手と絶対に試合をすると思っていた」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/12/25 11:02
井上尚弥のスパーリング相手を2度務めた勅使河原弘晶が自身のボクシング人生と怪物との「殴り合い」を語る
「僕は尚弥選手と絶対に試合をすると思っていたんです。僕がスーパーバンタム級で世界チャンピオンになって、そのころに尚弥選手が階級を上げてくる。ジムの三迫貴志会長も言ってくれてたんですよ。井上と試合をして1億円のファイトマネーを稼ごうなって」
2021年12月、タパレスとの挑戦者決定戦
勅使河原は20年8月、恩師の輪島会長の了解を得て、大手の三迫ジムに移籍し、世界タイトル挑戦のチャンスを待った。東洋太平洋タイトルを4度防衛し、ランキングはIBFスーパーバンタム級3位まで上がった。21年秋、ついに挑戦者決定戦のオファーが届く。同級4位で元WBOバンタム級王者、タパレスとのIBF挑戦者決定戦は同年12月11日に決まった。
決戦の地はアメリカ西海岸、カリフォルニア州カーソンのディグニティ・ヘルス・スポーツ・パーク。井上が17年に初めてアメリカで試合をした舞台でもある。勅使河原は海外で試合をしたこともなければ、外国に行ったこともなかった。相手は元バンタム級世界王者で、2階級制覇を狙う強敵だ。不安がないと言えばウソになるが、ついに巡ってきたチャンスに武者震いした。勅使河原は記者会見で力強く言い切った。
「タパレスはいい選手だと思っているけど、倒して勝って当たり前だと思っている。KO勝ちして世界タイトルマッチに挑みたい」
このとき、勅使河原は最後に負けた試合以降、10連勝をマークし、そのうち9試合をKO勝ちしていた。さらにそのうちの5人がタパレスと同じサウスポーで、そのすべてをノックアウトしていた。世界タイトル奪取に必要な勢いがあった。勅使河原は大きな自信を胸にアメリカに乗り込んだ。
<続く>