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「予想は井上尚弥選手のKO勝ち。でも…」タパレスに敗れて引退、勅使河原弘晶が明かす“特別な感情”「タパレスは僕の夢を全部奪いましたから」

posted2023/12/25 11:03

 
「予想は井上尚弥選手のKO勝ち。でも…」タパレスに敗れて引退、勅使河原弘晶が明かす“特別な感情”「タパレスは僕の夢を全部奪いましたから」<Number Web> photograph by Uhyon Cho

今から2年前の2021年12月、東洋太平洋スーパーバンタム級王者としてタパレスに挑んだ勅使河原弘晶。井上尚弥のスパー相手も務めた勅使河原に話を聞いた

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Uhyon Cho

 勅使河原弘晶はマーロン・タパレス(フィリピン)に挑んだ最後の日本人ボクサーだ。タパレスは勅使河原に勝利した後、世界チャンピオンとなり、12月26日には東京・有明アリーナで井上尚弥(大橋)と4団体統一戦を戦う。敗北から2年、ボクシングを離れた勅使河原がかつてのライバルを語る――。《全2回の第2回/前編はこちら

逆ワンツーも「効いてねえぞ」

 タパレスとの一戦を迎えるにあたり、三迫ジムの腕利き、加藤健太トレーナーは自信を持っていた。タパレスは日本人選手の木村隼人、大森将平(2戦)、岩佐亮佑と対戦しており、情報の足りない選手ではなかった。このうち負けたのはIBFスーパーバンタム級王者になった岩佐だけだから強敵には違いないが、「難攻不落」のチャンピオンではないと感じていた。

 ところが試合が始まると、タパレスの強さ、それ以上に“うまさ”が予想を超えていた。勅使河原弘晶は次のように振り返る。

「少しずつ崩していこうと考えていたんですけど、思ったよりも距離が遠かった。タパレスからは集中力の高さと殺気を感じました。最初の1分半、ミスしたほうがやられるなという緊張感があって、逆ワンツーをもらって会場が沸いていたけど、『効いてねえぞ』と思って。うまいなと感じましたね。それでちょっとポジションが悪いから左に移動しようと考えたところまでは覚えているんですけど……」

これは当てるまで時間がかかるな…

 タパレスは元WBOバンタム級王者であり、海外経験も豊富で勅使河原よりも大舞台になれていた。その違いもあっただろう。コーナー下で戦況を見守る加藤トレーナーはすぐに修正の必要性を感じていた。

「タパレスはパンチがあって振ってくるイメージの選手だったので、逆にこちらのパンチは当たるかなと思っていたんです。そうしたらタパレスは後ろ重心で深く構えて思ったより距離が遠い。これは当てるまで時間がかかるなとすぐに思いました。反対にテッシー(勅使河原)は練習してきたことを出そう、出そうと気持ちが前に出ていた。だから『当てにいかないで、まずはディフェンスをしっかりしよう』と言おうと思っていたら……」

【次ページ】 最初の1分半くらいしか記憶はない

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