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「目がふさがった状態で…壮絶な打ち合い」日本人が思わず感情移入した…八重樫東と井岡一翔“あの激闘”の真実「負けたのに周囲の反応が」 

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森合正範

森合正範Masanori Moriai

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posted2023/12/24 11:04

「目がふさがった状態で…壮絶な打ち合い」日本人が思わず感情移入した…八重樫東と井岡一翔“あの激闘”の真実「負けたのに周囲の反応が」<Number Web> photograph by AFLO

八重樫東が語る「あの井岡一翔戦」

「八重樫も強かった、ってみんな言ってくれたんです。負けたのに称えられるってないじゃないですか。僕は一生懸命やった結果、負けても得るものがあった。ああ、負けてもいいんだ、負けを恐れないでやった方がいいんだなと、そう思えた。あの試合、負けたからこそ、次があったんです」

 テレビの平均視聴率は関西で22.3%、関東で18.2%をマーク。瞬間最高視聴率は関西が29.1%、関東では22.7%をはじき出した。観る者は、殴られても目が塞がっても前に出てパンチを放つ八重樫に感情移入していった。闘い抜く姿勢に心からの拍手を送ったのだ。

「変な話、井岡君よりも負けた僕の方が得るものが大きかったかもしれませんね」

次の世界戦、相手は「学生時代4戦全敗」

 テレビ東京は故郷・岩手で映らなかった。それが井岡戦を境に、八重樫の試合はTBSで放映されるようになり、知名度は全国区になった。興行的にも欠かせられない人気ボクサーになった。2階級上のフライ級で再起戦を飾ると、すぐに世界戦のオファーが舞い込んでくる。学生時代4戦全敗、WBCフライ級王者の五十嵐俊幸からだった。

「負けたばかりなんで世界戦の話なんてこないと思っていたら、すぐに話が来たのは嬉しかった。五十嵐からすれば、何回も勝っているから余裕と思ったんでしょうけど」

 サウスポーは苦手だった。大学生を相手にしたスパーリングでも触ることができない。強打を打ち込まれることもあった。サウスポーの五十嵐戦へ不安が増してくる。

【次ページ】 世界2階級制覇のち「ロマゴンとやるか?」

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