猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス・安達了一「来季はコーチ兼任」に明かした胸の内…「まだ映像は見られない」“あの試合”の悔いと西武・源田壮亮への「ある伝言」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2023/12/07 11:04
来年1月に36歳になる安達。新たな挑戦のシーズンが始まる
それは安達もわかってはいるが、それでも悩んだ。兼任コーチになると、徐々に選手の割合が減っていってしまうのではという不安もあったのだろう。
「やっぱり戸惑いはありますよね。選手としてまだやりたい、できるだけ長く、というのがあるので。この歳になると、同い年で引退していく人が多いので、1年でも長くやりたいというのはあります」
「負けないように」指揮官の前例
最終的に兼任コーチを承諾したのは、中嶋聡監督の前例があったからだ。
「中嶋さんは(現役時代)兼任で9年やってるんで。例があるので、(まだできますと)言えるじゃないですか(笑)。負けないようにやります」
来季の肩書きは「選手兼任内野守備・走塁コーチ」に決まった。
選手がメインとはいえ、やはり後輩への指導も意識し始めている。
「今までよりは積極的に教えてあげたいというのはありますけど、難しいですね。自分はあまり言うほうじゃないんで。教えるのは難しい。人によって合う、合わないがあるじゃないですか。自分も教えられるのはそこまで好きじゃないタイプなので。ほんとにちょっと言うぐらいでいいのかなとは思うんですけど、やってみないとわからないですね。でもまずは、体が動く以上は、選手としてしっかりやりたいなというのがあります」
もう一つ、契約更改後の記者会見では、今シーズンの悔いも明かした。
「自分の持ち味は守備。でも日本シリーズでは自分の守備から流れを変えてしまったというのがあるので……守備を丁寧にやっていきたい」
今も悔やむ「あの場面」
甲子園で行われた阪神との日本シリーズ第5戦、2−0とリードして迎えた8回裏の守備だった。この回からリリーフした山﨑颯一郎が、先頭の木浪聖也を打ち取ったが、セカンド・安達の一塁への送球が逸れ、ランナーは二塁へ。その後、山﨑、宇田川優希が連打を浴びて一気に逆転されてしまった。
安達は、マウンドでうなだれる宇田川の背中をさすりながら、「全然宇田川のせいじゃないよ。俺のせいだから」と声をかけ続けた。
試合後は、「今日は自分のミスで試合を壊してしまった。あれはもう自分の責任。宇田川や颯一郎は全然悪くない。自分があのワンプレーでそういう流れを呼んでしまったので、チームとファンに申し訳ないです。自分のせいなので、みんなには気にして欲しくない」と責任を一身に背負った。
第6戦以降は出場機会がないまま日本シリーズは阪神に敗れ、悔しさは来季に持ち越された。
「怖さを改めて知りましたね。握り損ねたという感覚はなかったんですけど。焦るのは焦りますよね、紙一重だったので……。技術不足です。何を言っても言い訳になるから」
あの試合の映像はまだ見られないでいる。
それでもオフには嬉しい出来事もあった。