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「僕の視界から藤井聡太さんは一旦消えました」渡辺明39歳が本音で明かした“八冠・藤井聡太”の強さ「これは…どういう心理なんですかね」

posted2023/11/24 11:01

 
「僕の視界から藤井聡太さんは一旦消えました」渡辺明39歳が本音で明かした“八冠・藤井聡太”の強さ「これは…どういう心理なんですかね」<Number Web> photograph by Wataru Sato

藤井聡太に名人位を奪われ、19年ぶりに無冠となった渡辺明の胸中に迫った

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph by

Wataru Sato

 モニターの前でひたすら脳を焦がす日々の果てに、20歳の初戴冠から常に頂上に在り続けた男は、40歳を前に「九段」となった。勝利のみを追ってきた“リアリスト”渡辺明が語る、自らと、盤上の行く末について。
 発売中のNumber1085号掲載の[独占インタビュー]渡辺明「僕と、将棋のこれから」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】

――名人位を失った晩、Twitterで、19年ぶりに無冠になったことに対する心境と、ファンへの感謝を綴っていました。あれは相当に考えて書かれたのでしょうね。

「どうだったんですかね。何時ぐらいに書いたのか、ちょっと覚えていません。主催新聞社の取材を断ってしまったので、なんかコメントぐらい出さなきゃまずいかなと思ったんです。まあ、自分で書けば一番間違いがないですから」

――そのあとはどう過ごしたとか、覚えています?

「あの夜は、ホテルの自室で他の棋士と飲んだんです。結局、朝方ぐらいまで」

――飲みながら、あの冷静な文章を書かれたんですか?

「いや、飲んだのはアップしてからです。飲みながらでは理性がきかなくなる(笑)。あの日は立会人が戸辺(誠七段)とか高見(泰地七段)くんとか、そんなメンツだったんで。ほかに黒沢(怜生六段)くんもいたような。そういう流れになったのは、(家族ぐるみで付き合いが深い)戸辺がいたのが大きかったんじゃないかな。あの状況で僕に飲もうって言ってくる人は戸辺くらいでしょうからね(笑)。もしかしたら、僕の方から“部屋で飲むぞ”と言ったかもしれません。

 どちらにせよ、結構自然な流れですね。対局の夜って勝っても負けてもすぐには眠れないので、だったら飲む人がいるんだったら飲んだ方がいいかなって。飲んだ方がいいっていうか、飲もうかな、みたいな。将棋の話はしなかったですね。まさに雑談です」

「僕の視界から藤井聡太さんは一旦消えました」

――藤井聡太の強さをどう分析されていますか? 何度も聞かれている質問と想像できるだけに恐縮ですが、すでに割り切られているのでしょうか。

「4勝20敗ですからね。力関係において差をつけられているのは、もう認めるしかないです。しかもプロ同士の力関係って、急に変わるもんじゃない。将棋を覚えたての子の半年、1年とは意味が違うわけですよ。時間があればいろんな準備ができるのは確かですが、それをしたからといって力関係自体が簡単に変わるもんじゃない。これは正直な気持ちで、僕の視界から藤井聡太さんは一旦消えました。自分でタイトルを持っていたときは、挑戦者の最有力候補として常に意識する存在でしたが、いまとなっては、こちらが何かの棋戦で挑戦者にならない限りは彼との対戦はないわけですから。

 彼がデビューしたのが14歳。その頃から彼のことを意識してきたわけです。でも、それはこちらがタイトルを持っているからであって、逆になるとね……。自分が出てかなきゃいけないってなると、なんだろうな……そこの高いハードルに対してわざわざ思考を巡らせたくないっていうか。これは何だろう、どういう心理なんですかね」

――そうはおっしゃっても、彼の対局は全部チェックされていますよね。

【次ページ】 藤井と対戦するときは「求められる準備の質も量も全然違う」

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