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リーマンショックから15年…日産自動車がこの時代に野球部の活動再開を決めた理由とは?「全国一になる夢を描いて」 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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posted2023/09/22 17:00

リーマンショックから15年…日産自動車がこの時代に野球部の活動再開を決めた理由とは?「全国一になる夢を描いて」<Number Web>

2009年の都市対抗野球の神奈川県2次予選で勝ち、本戦への出場を決めた

「不況で自動車が売れなくなり、2009年に休部せざるを得なかったわけですけど、その後も活動の再開を望む声があがっていました。それは年数が経った今でも続いているんです。わが社は2020年5月から事業構造改革を進めており、今年がその最終年度で、一定のめどが立ったんですね。足元の回復から、将来の成長へとギアを切り替える、シフトする。そういうタイミングにきていますので、活動を再開するのなら今しかないだろうと」

 活動再開を望む声は社内だけでなく、両野球部の拠点がある地域、サプライヤー、販売会社などからも上がっていたという。それには、OBを中心にした地道な取り組みの成果もあったのだろう。限りなく撤退に近い休部でありながら、野球部の火を消さないようにと、元選手らが縁のある地域で野球教室などを開催。そこには日産のユニフォームを着て参加する、元プロ野球選手の姿もあったという。

「そういう活動をされているというのは、私も聞いて知っておりました。選手だった社員がボランティアで色んな活動をしてくれて、今も続けてやってくれている。それには本当に頭が下がる思いで……。彼らの行動が本社の判断を後押ししたっていうのは、正直言って私もあると思っています」

 横須賀市を拠点とする本社野球部は2025年から、福岡県苅田町が拠点の九州野球部は休部後に後継のクラブチーム「苅田ビクトリーズ」として活動を続けていたこともあり、こちらは2024年に早くも活動再開予定だ。

実業団の再評価を

 これだけの歳月を経ての復活だけに、両野球部には社会人野球に新風を吹き込んでほしいとの希望もあるが、濱口氏が強調したのは新たな価値観の創造ではなく、実業団がスポーツチームを所持することへの再評価だった。

「自動車業界は今、100年に一度の大変革期とも言われておりまして、そういった中で企業が持続的な成長を果たしていくためには従業員の意識改革が不可欠と考えております。企業スポーツは選手だけではなくて、従業員やその家族、応援してくれる方々の志気を高め、一体感を醸成する力を持っている。で、私たちが仕事する上で忘れてはならない、大切なチャレンジスピリット、これも思い起こさせてくれます。両野球部の復活を通じて、風土改革や意識改革をより加速させて、従業員のエンゲージメントを高めていきたい。日産自動車にとっては、野球が一番良いのかなと考えております」

【次ページ】 全国一になる夢を描いて

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