ゲインズがトーマスのメッセージを見せると、河村は少し驚いたように「彼が僕のプレーを見ているんですか？」と聞いてきた。

「そうだ。しかも、リトルガイ・クラブのメンバー入りだと言ってくれている。誰でも入れるわけじゃないからな」とゲインズが告げると、笑みが広がった。

　トーマスはその後、自身のSNSアカウントでも、大会の公式アカウントによる河村のハイライト動画をリンクして「彼は無双していたな。よくやった。僕ら小さいガードは一致団結しないとな」と投稿した。さらに、ゲインズを通して河村には「次はパリ五輪を決めるまではメッセージは送らないからな」とのメッセージも送ってきたという。

　9月2日、日本が順位決定戦最終戦で河村が14点、8アシストの活躍をして、カーボベルデに勝利してパリ五輪を決めると、約束通り、ゲインズのもとにまたトーマスのテキストメッセージが届いた。そこには、こうあった。

「He's got game（彼、なかなかやるな）」

W杯で大きなインパクトを残した河村勇輝と富永啓生　©︎FIBA

世界も注目した22歳の“伸びしろ”

　このワールドカップで、河村に注目したのはトーマスだけではなかった。大会の公式SNSアカウントでは何度かハイライト動画が投稿され、アメリカのウェブサイト、HoopsHypeでは、ワールドカップに出場した中で最も興味をそそる若手選手のひとりとして河村を取り上げている。

　河村自身、世界のトッププレイヤーたちと対峙し、自分の力がどこまで通用するかを確かめられる貴重な時間となった。初めて世界の舞台で戦った5試合で、河村は平均13.6点、7.6アシスト（大会3位タイ）の記録を残した。その中には、フィンランド戦のようにその潜在能力を見せつけた試合もあった一方で、18分の出場で7点、3アシスト、4ターンオーバーと低調だった試合（対ドイツ戦）もあれば、トム・ホーバスHCからのディフェンスの指示を守らず、タイムアウトで喝を入れられた試合（オーストラリア戦）もあった。ミスや調子の波はあったが、22歳の彼にとってそれは伸びしろでもある。

ホーバスHCから言葉をかけられる河村　©︎Takashi Aoyama/Getty Images

　大会後、ワールドカップでの5試合がどんな経験だったか聞くと、河村は前を向いて、きっぱりと「これからのキャリアにおいて、すごく大事な節目になった」と言い、さらにこう続けた。

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