その言葉通り、多くのチームが大会1カ月前から合宿を張るなかで、日本の若手は2カ月半前、それ以外の選手も（活動日数に制限のあるNBAプレーヤーの渡邊雄太をのぞいて）2カ月前から合宿を行ない、猛練習をして運動量を磨いてきた。これについては渡邊がこう話している。

「体力がお互いにある時間帯は、地力の差が、多少なりとも出てしまうこともあると思います。ただ、自分たちは練習を他のチームよりメチャクチャやっている分、後半は体力で勝っていけると思います」

　実際、この運動量は日本が今大会で2度も後半に大逆転を果たす原動力となった。

『選手ごとの役割の徹底』については、まさに東京五輪の女子の日本代表が体現した強さの源泉だ。当時の女子代表のキャプテンである髙田真希は証言している。

「ホーバスHCが、各選手としっかりコミュニケーションを取って、『君にはこういうことを求めている』と役割を明確にしてくれたのが大きかったです。何を求められているのかが明確になっていたので、良いプレーができた。それがメダルにつながったと思います」

　最終のカーボベルデ戦で8本中6本の3Pを決めた富永啓生のようなシュートの得意な選手、Bリーグのベストディフェンダー賞をとった原修太のような守備の強い選手、ゴール下で身体を張れる「リアル桜木花道」川真田紘也など、一芸に秀でた選手を集めた。

Bリーグではベストディフェンダー賞だった原修太　©FIBA

Bリーグからメンバー入りの9人でオールスター選手は3人だけ

　ちなみにその結果、奇妙なデータが残っている。

　今大会は日本のBリーグから9名の選手がメンバー入りしているが、そのなかで今年のオールスターに選ばれた選手はわずか3人だけ。オールスターは各チームの顔となるようなオールラウンダータイプが選ばれがちだが、オールスターに選ばれるほどの能力はなくとも、一芸に秀でた選手がそれぞれの武器を持ち寄って、日本代表を作ったのだ。そんなチーム構成については、渡邊が太鼓判を押した。

「一人ひとりが、求められている役割を理解してやれた。本当に理想のチームです。誰一人エゴみたいなものを見せることなく、自分の役割に徹してくれたのでね」

　そして、自分たちを信じられた理由の3つ目。それがホーバスHCの誠実さだった。

　今回の日本代表は１次ラウンドでドイツとオーストラリアに敗れて、ベスト8入りをかけて戦う2次ラウンドには進めずに、順位決定グループに回った。世界ランキングなどを参照すればそれも当然のことのように思われるのだが、「死のグループ」と呼ばれた１次ラウンドを突破することを誰よりも信じていたのがホーバスHC自身だった。

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