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慶応の応援“本当はどう感じたのか?”「クラクラした」「心地いい」割れた仙台育英の発言…2年連続・決勝校の“本音とプライド”を見た
posted2023/08/24 11:04
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Hideki Sugiyama
実際は想像を超えていた。
「すごいと知っていたんですけど、最初から、それより2、3個上の応援がきました」
そう消え入りそうな声で振り返ったのは、仙台育英のレフト、鈴木拓斗だ。鈴木は三塁側アルプススタンドの慶応応援団の爆音を、他の誰よりも近距離で受け続けた。
”慶応アルプスに最も近い”レフトの証言
三塁側アルプス席は、ランナーが出たり、点が入ったりすると、まるでエネルギーが投下されたかのように、応援のボルテージが一段上がった。鈴木が続ける。
「点数が入ったりしたら、球場全体が応援しているような感じになって……。相手のリズムになってしまうので、聞かないように、流されないようにしていたんですけど、少し飲み込まれてしまった感じです」
実際には三塁側とライトスタンド、つまり、球場半分が慶応の応援席のようになっていたのだが、鈴木のポジションにいたら「球場全体」と錯覚しても不思議ではない。
浴び続けて…「クラクラしました」
仙台育英は春のセンバツ大会でも慶応と対戦していて、やはり同じように三塁側から応援の圧力を受けたが、今回は、それを上回っていたという。慶応サイドからは、それなりの距離があったライトの斎藤陽でさえこう言った。
「選抜のときも、すごいなって思ってたけど、それ以上の応援が来た。すっごい響く。やばいっす」
慶応の応援は受けている時間が長ければ長いほどボディーブローのように効いてくる。仙台育英は6回まで走者を許していたため、中盤まで、常に大応援団の圧力を受け続けたことになる。斎藤は冗談めかして話す。
「ずっと流れているので、クラクラしました。最初の方は三者凡退がなくて、ずっとランナーが溜まっていたのでしんどかった。疲れましたね」