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「29試合連続安打」の中日・岡林勇希は“双子で右投げ左利き”…MAX153kmの剛腕をヒットメーカーに導いた“二重三重の奇跡”とは 

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渋谷真

渋谷真Makoto Shibutani

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photograph byHideki Sugiyama

posted2023/08/23 17:00

「29試合連続安打」の中日・岡林勇希は“双子で右投げ左利き”…MAX153kmの剛腕をヒットメーカーに導いた“二重三重の奇跡”とは<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

最下位に沈む中日だが若手の星は着実に進化を遂げている

MAX153kmも投手は“却下”

 そんな逸材だが、入団時はドラフト5位である。三重県の菰野高の戸田直光監督は投手育成に定評のある指導者で、西勇輝(阪神)も教え子の一人だ。そして岡林の2学年上の兄・飛翔、1学年上の田中法彦も高校からダイレクトで広島に入団している(2人ともすでに退団。田中は今季からセガサミーに所属)。つまり、3年連続で菰野高のエースはプロ野球選手となったわけだ。

 しかし、岡林だけは入団時から野手だった。球団内部で多少の検討はされたようだが、二刀流、もしくは最初は投手からという育成プランは却下された。前述のように最速153kmを誇る速球派だが、投手として指名、育成するには物足りなさがあったからだ。それが他球団が指名を見送った理由だが、中日だけは野手としての魅力を感じていた。

スカウトが見初めた運命の2本塁打

 そのきっかけとなったのが2年生の夏の三重大会。ネット裏に陣取ったスカウトの目的は田中の最終チェックだったのだが、その試合で岡林は津市営球場の場外を含む2本塁打を放っている。高校生レベルとはいえ、インコースの難しい球をさばく姿は、中日スカウト陣の心をひそかに射抜いていた。そこから1年間、野手として岡林を見続けて、指名を決定。人生とは不思議なもので、5ツールのうち唯一岡林に欠けている長打力が、プロ入りの決め手になったのだ。

 前述のように兄もプロ野球選手。そして、岡林自身は双生児である。王貞治(ソフトバンク球団会長)、松田宣浩(巨人)、筒香嘉智(米ジャイアンツマイナー)にホセ・カンセコら野球界にも意外と双子はいるが、岡林によると「初めて言うと少し驚かれるくらいで、損だと思ったことはありません」。妹との双子だと、比較される場が少なかったようだ。

 統計では1%と言われる双生児だが、岡林は10%と言われる左利きでもある。だけど右投げ。繰り返すが153km。左利きは生まれつきだが、右で投げているのは明確な理由がある。

【次ページ】 二重三重の奇跡が導いたプロ入り

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