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「教えるとか、まったくありません」大谷翔平を支えたコーチが目撃した“凄まじさ”…当事者の証言「勝手に上達して、勝手に成長していました」 

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城石憲之

城石憲之Shiroishi Noriyuki

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/08/24 11:03

「教えるとか、まったくありません」大谷翔平を支えたコーチが目撃した“凄まじさ”…当事者の証言「勝手に上達して、勝手に成長していました」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

日本ハム時代の大谷翔平。コーチとして、城石憲之はどのような思いで二刀流を見守ったのか?

大谷翔平にコーチとしてどう向き合った?

 この年は、翔平がプランどおりに「リアル二刀流」を実現させた年でもありました。

 投手として登板しない日はDHとして主軸を打ち、先発投手の日はDHを使わないで主軸打者としても打席に入る。

 もちろん日本中で話題になっていましたから、ヤクルトでコーチをしていた頃から、翔平の二刀流チャレンジについては知っていました。野球界でも解説者たちが、いろいろ言っていて、どちらか1本でやったほうがいいんじゃないかというのが支配的だったと思います。

 僕もそう思っていましたので、だったらピッチャーだろうとか、いやバッターだろうとか、周囲の人たちと勝手にあれこれ話をしていました。

 ところが、ファイターズにやってきて、実際に打撃コーチとしてバッティング練習を見たら、もう自分の狭い見識が恥ずかしくなる思いでした。

 今まで見てきたどのバッターより明らかにすごいバッティング練習でした。スイングスピード、パワー、ダントツでした。

「ああ、これは二刀流やるよな」と納得しました。何か技術的なことを教えるとか、まったくありません。誰もあんなふうに振れないし、誰もあんなふうに打てないですから。

 コーチとしてできるのは、もうケガをしないように万全の注意を払うだけです。

 環境だけはきちんと与える。後はもう勝手に上達して、勝手に成長していました。

 言えるのは、そのチャレンジと成長をすぐ近くで見られたのは、僕にとって貴重な経験だったということです。

 翔平のように、いくつもの天賦の才に恵まれた選手でも、目標に近づくためにはどうすればいいかを真剣に考え、毎日コツコツと努力を積み重ねている。ほぼすべての選手は翔平ほどの才はないのですから、せめて努力の質と量は翔平に負けないくらい気を使って、続けていかなくてはいけない。

 翔平は計画どおりに体を鍛えて、技を磨いて、着実にステップアップしてきました。

 若い選手たちにはその事実を伝えることができます。

〈前編「野球をやめた日」編からの続き〉

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