炎の一筆入魂BACK NUMBER
《伝統の猛練習》一軍昇格のチャンスが少ないカープのファームで、5時起床の選手が腐らず努力を続けられるわけ
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2023/08/14 06:00
右脇腹痛で離脱中、直射日光降り注ぐ由宇練習場で二軍練習に参加した西川龍馬。一軍復帰翌日の8月9日には本塁打を放った
そんな新井監督と同じ釜の飯を食った福地二軍打撃・走塁コーチは、先述したように前時代的な指導もあった広島流で育った。耐え忍ぶ時間が長かった現役時代の経験が、今に生きている。
93年に杵島商高からドラフト4位で広島に入団し、2年目の95年から4年連続ウエスタン・リーグ盗塁王となるも、チーム事情もあり、なかなか一軍での出場機会を得られなかった。限られたチャンスしかない中でも、歯を食いしばりながら日々の猛練習に耐えてきた。
「あれが絶対ベースになっている。人に負けないくらい練習してきたし、いろんなことを学んできた」
30歳となった06年シーズン前にトレードで移籍した西武でレギュラーをつかむと、プロ15年目の08年には3球団目のヤクルトで初めて規定打席に到達し、盗塁王のタイトルを獲得した。30代に一気に球団の主力に駆け上がった野球人生が、選手に伝える言葉に重みを加える。
「一軍で試合に出るために、自分の何が売りなのか。ピースの一片として、どこにはまるのか。1イニング守るだけの役割になるかもしれないけど、それもすごく大事。最後は長所で勝負するしかない」
レギュラーの座を掴むために
誰もがレギュラーを目指している。それは一軍の代打の切り札となったチーム最年長の松山竜平であっても変わらない。ただ、全員がレギュラーになれるわけではない。選手個々がチームの戦力としてどう役立てるか。開幕を二軍で迎えた羽月隆太郎は代走として、矢野雅哉は遊撃の守備固めとして、今の一軍に欠かせないピースとなった。今は限られた起用でも、その先にレギュラーへと続く道があるかもしれない。
1年目の昨季は63試合に出場しながら、今季ここまで一軍出場のない中村健人は今、外野だけでなく一塁にも挑戦している。
口を開けて待っているだけではチャンスをつかめない。歯を食いしばり、いつ訪れるかわからないチャンスに備えなければいけない。
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