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なでしこジャパンが“W杯優勝前の完敗”で痛感した「持ち味の守備が上手くいってなかった」問題…FW安藤梢と永里優季はどう対応したか
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byDPA/JIJI PRESS
posted2023/08/09 17:34
女子W杯ドイツ大会メキシコ戦の日本スタメン。(上段左から)澤穂希、安藤梢、熊谷紗希、阪口夢穂、海堀あゆみ、永里優季。(下段左から)岩清水梓、宮間あや、近賀ゆかり、大野忍、鮫島彩
DFの選手は比較的自由にボールを持つことが出来たが、そこから先につながっていかない。一気に前線の選手を狙った場合、足元につけようとすれば相手に体を寄せられてボールを奪われた。裏のスペースに出しても、パスのスピードが遅かったり、FWとのタイミングが合わなかったり、有効な攻撃が繰り出せなかった。中盤の選手が最終ライン近く下がって来てボールをさばいても、同じことだった。
安藤は縁の下の力持ちとしてチームを支えていた
ボールを「受ける側」の永里は問題の原因を探りつつ、後半になって新たな策を試みた。
「後半はボールを受ける位置をちょっと下げたんです。自分がボールに絡んで、チャンスを作りだそうと切り替えて。それで、何本か、それなりのところまではいけました」
手応えを得て、次の試合ではゴールを奪うことだけに専念するのではなく、状況に応じてチャンスメイクに加わろうと考えていた。
2トップのパートナーであるFW安藤梢は、それまで縁の下の力持ちとしてチームを支えていた。ニュージーランド戦では鋭いタックルから先制ゴールの起点を作ったし、メキシコ戦でも自らディフェンスでチャンスを生み出し、何度も惜しいパスを通した。
だが、イングランド戦のパフォーマンスは散々だった。守備でも存在感を見せられず、永里ほどチャンスに絡むことも出来なかった。
ただ安藤は、守備に問題があったからこそ、攻撃が上手くいかなかったと考えていた。
「自分たちの持ち味である守備が上手くいってなかった。だから、上手い具合にボールをとれなくて、攻撃にいけなかったと思います」
イングランド戦が終わってから約2時間半後。開催国ドイツがグループA1位通過を決め、日本との対戦が決まった。
ドイツ戦で佐々木監督は「MVPは安藤にあげたい」
準々決勝ドイツ戦では、エースと期待されていた永里がハーフタイムに交代を命じられることになった。
その理由の一つは、安藤が出色の出来を見せたからだ。この日のプレーは、佐々木則夫監督をして「個人的にはこの試合のMVPは安藤にあげたい」と言わせたほどだった。
安藤は、少し下がり目の位置で、体を張ってボールを収め、周囲に散らしていた。
「この前の試合、苦しいときにボールを前線で収められなかったし、ドイツ戦は耐える時間が多いと思うので、ボールが来た時にしっかりキープして、時間を作れるようにと意識してました」