- #1
- #2
Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
なでしこジャパンが“W杯優勝前の完敗”で痛感した「持ち味の守備が上手くいってなかった」問題…FW安藤梢と永里優季はどう対応したか
posted2023/08/09 17:34
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
DPA/JIJI PRESS
日本に土がついた唯一の試合は、FWがもっともボールに触れることの出来なかった試合だった。
イングランドとの第3戦――。すでにグループリーグ突破を決めていた日本は、この試合に勝ち、決勝トーナメントの戦いに弾みをつけようとしていた。
だが、思惑は外れた。パスが通らない。ルーズボールは奪われる。前線からの守備が機能しない。選手たちの動きも鈍かった。
後半に持ち直したとはいえ、前後半に1点ずつとられて0-2の完敗。過去2戦の相手とのレベルの違いを痛感することになった。
明らかになったのは守備の問題だった。前半を終えてベンチへ下がる途中、チームの中心であるMF宮間あやがFW永里優季を呼び止め、険しい表情で話しかけた。
「ボランチ(のパスコース)を完全に切って欲しい」
ゴールを最優先に考えて、相手のボランチとセンターバックの間にポジションをとる永里に対しての要求だった。
永里は宮間の要求を理解しつつ「別のこと」を考えていた
守備の中でファーストディフェンダーが決まらないと、後ろのポジションが決まらない。
サッカーを知り尽くした宮間は、この時点で、前線にくすぶる問題点に気がついていた。
永里とて宮間の指摘は理解していたが、頭の中では別のことを考えていた。
「ウチは、点をとりたいから、CBにもボランチにもいけるポジションをとっていたのに……。ハーフタイムは失点のことばっかり話し合っていて。どうやって点をとるかという話し合いにはなっていなかった」
攻撃でも浮き彫りになった問題がある。組織が整備されて、個の当たりが強いチームと対戦したときに、いかにしてボールをつないでいくのか。