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「打者が捕手の位置を見るのは“カンニング”です」甲子園出場の慶應高監督が語る、高校野球指導者への疑問「『バレないようにうまくやれ』が正しい態度か?」
text by
森林貴彦Takahiko Moribayashi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/08/11 06:01
センバツに続き、夏の甲子園の舞台に立つ慶應高校・森林貴彦監督。異端視される50歳の指揮官は高校野球のある問題点を指摘する
こうした恐怖心が欠如している指導者は、口では「子どもたち、選手たちを勝たせたい」と言いながら、結局は自分が勝ちたいというタイプです。特に一部の私学の野球部においては、その年の成績によって監督を解任されるというケースも少なくないため、このような指導を行ってしまうのかもしれません。もちろん私自身も試合には勝ちたいです。しかし、それと引き換えに何もかも切り捨ててよいというものでは、決してありません。欲張りかもしれませんが、一人ひとりの選手もチームもいろいろな意味で成長させながら、勝利という結果を目指すべきです。
サイボーグのように野球だけをやらせて…
選手から勉強する時間まで奪い、まるでサイボーグのように野球だけをやらせて結果を残したとしても、その選手の最後の夏が終わったときに何も残っていないという人になってしまうのだとしたら、それは大変罪深いことです。高校野球ができるのは15歳から18歳の約3年間ですが、その先に60~70年に及ぶ長い人生が待ち受けています。その60年、70年に大変な影響を与えてしまうという自覚を持って指導しなければいけません。
「野球だけやっていればいい」
こんな言葉が日常的に耳に入る環境にいると、本当にそう思い込んでしまう選手が出てきても不思議ではありません。そうなると、短期的な野球の結果は出しやすくなっても、その選手自身の人生の選択肢や可能性を狭めてしまうだけです。本当に選手ファーストで物事を考えているのであれば、そんなことは絶対にできないはずです。
<「批判する理由」編へ続く>