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[監督の仕事術]栗山英樹「最後は魂が決する」
posted2023/07/20 09:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Kiichi Matsumoto
アメリカを倒して再び世界一になる――。指揮官が描いた青写真は現実のものになった。それは周到な用意と、経験に裏打ちされた感覚があったからこその偉業だった。その詳細に改めて迫る。
――WBCで世界一になりました。栗山さんが監督として掲げた目標を叶えてくれた今回の日本代表、いいチームだなと感じたのはどの瞬間だったんでしょう。
「それは……ないですね」
――えっ、ないんですか。
「監督って、よくこういうチームで戦いたいとか、理想のチームを作りたいと言いますけど、僕はそういうものはないと思っています。監督というのは理想のチームで戦うんじゃなくて、目の前にあるチームでいかに勝ちやすい形を作るかということが仕事ですから……理想というなら、大谷翔平が9人いればいいんだ(笑)」
――栗山さんの中には、いいチームの定義はないということですか。
「結果がこうだったからいいチームだったという表現は僕の中にはありません。『動機善なりや、私心なかりしか(稲盛和夫)』の言葉通り、動機が普遍的に善で、自己中心的な私心がなければ、結果を問う必要はない。すべての人が命がけで私心を捨てて勝ちに向かってくれたとき、その魂は必ず伝わります。そういうチームであってほしいとは思っていましたし、実際、今回のチームはそうでした。あれだけのトッププレイヤーがみんな、自分のことを捨てて勝とうとしてくれていた。そのことに対する感謝と感動はものすごくありました」