テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
「オオタニ、シアトルに来て!」反応に困ったけど…大谷翔平“TVに映らない”球宴での人気者ぶり「ゲンキデスカ? バットニ、サイン…」
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph bySipa USA/JIJI PRESS
posted2023/07/14 17:21
オールスターに出場した大谷翔平は、出塁してフリーマンと談笑する。テレビで映らないところでも、やっぱり人気者だった
それでも、前半戦終盤は変化球の割合を見直し、直球を多投することで立て直した。世界最高峰のメジャーリーグでは、現状維持は後退を意味する。相手に研究されれば、自らがレベルアップすることで壁を乗り越える。後半戦はこれまでと違う大谷の投球が見られるかもしれない。
捕手を座らせ19球を投げ終えた、最も驚いたのはここからだった。
大きな歓声と拍手がもう一度沸き起こると、自然と「Come To Seattle!! Come To Seattle!!」(シアトルに来て!!)の大合唱が沸き起こった。今季終了後にFAとなる大谷に向けた敵地ファンからの異例のラブコールだった。反応に困った大谷はボールを観客席に投げ入れ、笑顔を振りまいた。翌日の本番の2打席でスタンド全体に広がった大合唱の布石となったのは言うまでもないだろう。
日本人通訳に習った日本語で「バットニ、サイン…」
選手間でも大谷の人気は圧倒的だった。
球宴当日の練習前。ア・リーグのクラブハウスが報道陣に開放されると、大谷の姿はなかった。報道陣の多さを見たスタッフが気を利かせ、大谷を一時トレーニングルームに“避難”させたほどだった。
その後、大谷は姿を現したが、大谷を待っていたのは報道陣だけではない。ナ・リーグのダイヤモンドバックスの遊撃手ペルドモがバットを片手にア・リーグのクラブハウスにやって来た。お目当てはもちろん大谷だった。
「ゲンキデスカ? バットニ、サインクダサイ」
ダイヤモンドバックスの谷沢順子トレーナーやメッツの千賀滉大の通訳に習ったという日本語で直接交渉。大谷は驚いたが、すぐに笑顔でサイン。カブスのスワンソンの代替選手として初選出の23歳は「今までもらったサインで一番うれしい」と笑みを浮かべ、「大谷はベスト。目の前でプレーを見られることを誇りに思わないといけない」と喜んだ。
一昨年、昨年の球宴に続き今年もスタッフを経由して大量のサインを頼まれていた大谷だったが、ペルドモの敬意と熱意ある行動にはきっと心を打たれたことだろう。