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[投票者の視点]サイ・ヤング賞を取り巻く時代の変化
posted2023/07/06 09:00
text by
小西慶三Keizo Konishi
photograph by
Getty Images
1956年に創設された、最高の投手を決める賞。ただ、この賞は投手の何を評価しているのか。日本メディアとして初めて票を投じた記者が、投票者の視点で受賞者のトレンドを読み解く。
2002年、ア・リーグのサイ・ヤング賞に、筆者は日本メディアとして初めて投票した。同賞は全米野球記者協会(Baseball Writers’ Association of America、以下BBWAA)が定める4賞(ほかにリーグMVP、最優秀監督、最優秀新人)のひとつで、それぞれのリーグで最も活躍した投手に贈られる。日本のプロ野球で相当するのは沢村賞だが、これは先発完投型のみが対象だ。サイ・ヤング賞では全投手が対象となり、2003年のエリック・ガニエ(ドジャース)、1992年のデニス・エカーズリー(アスレチックス)など、クローザーが選ばれたこともある。
全米に15あるBBWAA支部('02年当時は14)から2名ずつの投票者が、1位から5位票まで投じ、そのトータルポイントで受賞者が決まる。'02年ア・リーグではバリー・ジト(アスレチックス)が1位票17を獲得、2位ペドロ・マルティネス(レッドソックス)に18ポイント差をつけて初受賞した。思い出深いのは、開票結果発表直後にボストン・グローブ紙の記者から「ジトを1位とし、マルティネスを2位としたのはなぜか」を電話取材されたことだ。米メディアでは活躍するアスリートを比較する記事、番組が人気で、それぞれの意見や考えをぶつけ合う土壌がある。こちらの説明は、確かこうだった。