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「ここまでやるのか」スターダム“12人金網脱出マッチ”の衝撃…高度な空中戦に林下詩美の大流血も「ネジがぶっ飛んでる奴ばっかだな!」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/06/29 17:00
6月25日のスターダムで行われたクイーンズ・クエストと大江戸隊の「全面戦争ケージマッチ」。金網の上で林下詩美を痛めつける刀羅ナツコ
鉄パイプで林下詩美が流血、上谷沙弥はバットを手に…
「スターダムはネジがぶっ飛んでる奴ばっかだな! ま、私もだけど」
結果は「最悪」と吐き捨てたが、キッドは開き直ったように言った。
金網をよじ登り、外に出るという単純なアクションだが、ここに仲間を見捨てるか、助けるかの人間模様が現れる。
ここの所、ぎくしゃくしていたQQのリーダー林下と上谷の不穏な関係に目を付けたのが大江戸隊のリーダー刀羅だった。うまくいけば、林下を敵対するQQから追い出すことができる、という刀羅の目論見だった。
林下の性格からいって、自分が途中で脱出してしまうことはないだろう。刀羅にしてみればQQの最後の1人は林下という計算だった。
実際に林下は天咲やレディ・Cの脱出をフォローした。脱出とリング内の人数のバランスが勝敗に影響してくる。脱出は早ければいいというものではない。
終盤には、吏南、妃南、AZM、天咲、渡辺、キッド、レディ・C、琉悪夏、上谷の順で9人がすでに脱出していて、金網の中には林下、刀羅、鹿島の3人が残っていた。
金網の上で激しくもみ合う林下と刀羅だったが、刀羅の鉄パイプが林下の顔面を襲う。それは林下の左目の上に当たった。リング内に落下した林下に、刀羅は頭から決死のダイブ(スワントーンボム)。これはアカプルコのケブラーダの断崖からのダイブより勇気がいるだろう。圧巻のダイブを決めた刀羅は林下を置き去りにして、金網を勢いよく登って脱出した。
刀羅の鉄パイプの一撃で、林下は出血していた。血が顔面を赤く染めた。まるで林下が好きな赤いバラの花のように。それでも、林下は懸命に起き上がった。
鹿島を担ぎ上げた林下は鹿島を投げ捨てると、金網をよじ登った。林下はいい顔をしていた。金網を上がった上谷が手を差し伸べていた。
だが、ここに金網の外から、渡辺がバットを持って2人に近づいた。そして、にやりとすると、そのバットを上谷に渡した。
上谷は林下を殴打するのか?
上谷は渡辺からバットを受け取ると、躊躇したが、そのバットを渡辺に対して振った。