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藤井聡太は張本智和のサーブを鋭く打ち返した…張本が驚いた、藤井聡太の“正解を見つけ出す力”「訪れてみたい国は?」「平成最大の出来事は?」答えは… 

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北野新太

北野新太Arata Kitano

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photograph byTadashi Shirasawa

posted2023/06/23 11:02

藤井聡太は張本智和のサーブを鋭く打ち返した…張本が驚いた、藤井聡太の“正解を見つけ出す力”「訪れてみたい国は?」「平成最大の出来事は?」答えは…<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

15歳の藤井聡太はスポーツ紙の対談企画で1歳年下の張本智和と卓球で対戦。張本のサーブに当初は苦戦した藤井だったが…

「今年で18歳ですし、タイトルホルダーという立場にもなりました。将棋界を代表する立場としての自覚は必要になるのかな、と感じています」

 言葉選びに迷いながらも「将棋界を代表する立場になった」と逃げずに言った。

 14歳での始まりの日、子供か大人かと聞かれて「ちょっと難しいです……」と口ごもった少年はもういなかった。

声を上げて笑う藤井

 翌日午後。日本将棋連盟事務局の片隅には、新王位となった青年がいた。数時間前まで福岡で一夜明け会見に臨んでいたが、さらに翌日の非公式戦に参加するため、もう東京に到着していた。二冠の余韻を漂わせず、記念免状に膨大な数の署名を入れる作業に取り組んでいた。聖なる棋士となり、王の位に在るタイトルホルダーとして。

 会館を出ようとする18歳に声を掛けた。夏の間、全国で追い掛け回したこと、答えに窮するような問いに答えてくれたことへの御礼を軽い調子で伝えると、思い当たる節があったのか、藤井は声を上げて笑った。

「今度、スポーツ雑誌の『Number』で将棋特集をするんですけど、自分が先生の記事を書かせていただきますので……。たぶん表紙ですよ」と告げると、虚を突かれた表情になった。

「あ、ハイ……宜しくお願い致します」

 表情と声色からはカバーを飾る感激ではなく「スポーツ雑誌で将棋ですか……なるほど……」という興味が読み取れた。

 旧式のエレベーターに乗り込み、例のオックスフォード地の半袖ボタンダウンシャツを着た青年は会館を出た。

 真夏はまだ翳らず、藤井聡太はまだ18歳だった。

藤井聡太(ふじい・そうた)

2002年7月19日、愛知県生まれ。杉本昌隆八段門下。史上最年少の14歳2カ月で四段に昇段し、史上5人目の中学生棋士に。2016年の加藤一二三戦を皮切りに前人未到のデビュー29連勝を記録。以降、2018年朝日杯将棋オープン戦で全棋士参加棋戦最年少優勝など、数々の最年少記録を樹立。タイトル獲得は王位・叡王・棋聖が3期、竜王・王将が2期、名人・棋王1期の計15期。現在7冠を保持。

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「将棋に巡り合えたのは運命だったのかな」藤井聡太14歳が語っていた“天才少年の使命感”「強くならないと見えない景色がある」

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