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トスト代表「裁定が覆ることはない」角田裕毅の疑惑のペナルティ裁定にアルファタウリが抗議しなかった理由
posted2023/06/07 11:01
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Masahiro Owari
チェッカーフラッグを受けたドライバーは、パルクフェルメに帰ってきた後、レギュレーションで決められている体重測定を車検室で行う。それを終えて、車検室の裏側から出てきたのち、ドライバーは初めてトレーナーからドリンクボトルを受け取って水分補給を行い、広報とともにメディアの取材を受けるために、ミックスゾーンへ向かう。
しかし、第8戦スペインGPで66周のレースを終えて車検室から出てきた角田裕毅は、あえてトレーナーらが待っている場所を避け、ひとり建物の陰へ向かった。そこでヘルメットを脱ぐと、座り込んで茫然自失となっていた。
その理由は、9番目にチェッカーフラッグを受けながら、レース終盤に起きたバトルを巡ってレース審議委員会から5秒ペナルティを受けて、12位に降格してしまったからだ。
レース終盤、9番手を走行していた角田は、10番手にいた周冠宇(アルファロメオ)が徐々に差を詰めてきた57周目の1コーナーでサイド・バイ・サイドのバトルを演じた。イン側を守る角田にアウト側から仕掛ける周。次の瞬間、周がコースアウトし、「角田に弾き出された」と無線で訴える。しかし、実際には2人は接触していない。クリーンなバトルに見えたが、レースコントロールは審議対象とし、直後にレース審議委員会は角田に5秒ペナルティを科した。
角田の失望、裁定への疑問
「厳しいレースを全力で戦い抜いて、9位を勝ち取った。すごくうれしかったのに、チェッカーフラッグを受けた後、無線で『5秒ペナルティを受けて入賞圏外へ落ちた』と聞き、本当にがっかり。その落ち幅は結構、大きかったです。ポイントを逃したという現実をいまもまだ受け止められません」
パーソナルマネージャーのマリオ宮川らに助けられて、ようやく立ち上がってミックスゾーンまでやってきた角田は振り絞るようにして、その胸中を語った。
マリオ宮川もレース審議委員会の裁定に疑問を呈した。
「あれは周が自分から出て行っただけで、ユウキが押し出したわけではない。接触もしていないのに、5秒ペナルティなんて聞いたことがない。長いことレースを見てきたが、ひどい裁定だ」