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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「自慢のお母ちゃんじゃないか、って」DeNA山崎康晃が語るフィリピンのルーツへの誇り 亡き母が最後に託した「ソーパス」の味〈母の日〉
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/05/14 11:03
投手キャプテンとして好調のDeNAを引っ張る山崎康晃
ダル、宇田川らも活躍。「ダブル」の強み
昨今では日本のスポーツ界に、さまざまなルーツを持つトップアスリートが増えてきた。今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、イラン人の父を持つダルビッシュ有投手(パドレス)や、山崎と同じフィリピンにルーツを持つ宇田川優希投手(オリックス)が日本代表で大活躍。ラーズ・ヌートバー外野手(カージナルス)は日系人選手として初めて侍ジャパンの一員となり、一躍人気者になった。ことあるごとに自らのルーツを突きつけられる「ダブル」の子どもたちへ、山崎は自らの生き方をもってエールを送る。
「色々なルーツがあることの強みや、自分にしかできないことって必ずあると思う。それを生かして、誇りを持って過ごしてほしいなと思います。僕のことで言えば、ずっと強い体で投げられていることは親のおかげ。それから愛情深さというものはフィリピン人の母から受け継いだことだと思っている。小さい頃から試合に出かける時はハグをして、キスもして……そういう愛情の伝え方が僕は当たり前だと思ってきた。人よりも強くて優しい心を持っていると思うし、人の気持ちを大事にする感受性というところは自分の環境が育ててくれたと今も思っています」
思い出の「ソーパス」は母の味
小さい頃から食卓には日本の料理とフィリピンの料理が同じように並んでいた。山崎の大好物は、フィリピン料理のソーパス(Sopas)というスープだ。牛乳をベースにして、肉やソーセージ、野菜がたっぷり入っている。
「僕はニンニクが大好きなので、お母さんはニンニクをいっぱい入れてくれていた。栄養も取れるし、体にもいい。めちゃくちゃ好きなので僕一人で鍋1個分くらい食べるんですよ。日本の一般的な家庭にあるものではないけれど、僕にとっては特別なものでした。お母さんは亡くなる前にそのレシピをお姉ちゃんに伝授しておいてくれたんです。自分がいなくなった後も僕がずっと大好物を食べられるように、って」
キャンプインの前や開幕前、今でも山崎は節目の時に「ソーパス」を食べてからのぞむ。姉に伝えられた“母の味”を口にするたびに思い出すのは、闘病の末に亡くなった最愛の人の笑顔だ。
〈続く〉