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プロ野球PRESSBACK NUMBER
“構想外”が人生の転機に…阪神Women前田桜茄が語る女子野球のリアル「フルスイングの魅力を知った」「結婚して終われたら…それが理想なんです」
text by
土井麻由実Mayumi Doi
photograph byHaruka Sato
posted2023/05/28 11:02
虎ポーズで…
前田が育った宜野座村では毎年、阪神が春季キャンプを行っている。幼いころは野球教室にも参加した。その阪神の女子チームに入団したことには「導かれるべくして導かれた」と強烈な縁を感じている。ただ、阪神タイガースWomenはプロチームではない。野球で生計を立てられているわけではなく、選手たちはみな仕事を持っているか学生だ。
野球用具店で働いて…女子野球のリアル
前田も野球用具店で働きながら、週3日、夜に練習を行う。土曜は試合、日曜が休日だ。練習日以外は家でギターを弾き、映画を見ることが趣味で、2匹の愛犬の世話や大好きなスキンケアが癒しの時間。ギターは女子プロ時代に加藤優さん(元女子プロ野球選手)からもらったもので、「独学で弾けるまで練習しました」と熱中し、たった1日で1曲弾けるようになったというから、その集中力は相当なものだ。最近では親友・高塚南海さん(元女子プロ野球選手)の結婚式で自作の歌を弾き語りし、喜ばれたという。
創設メンバーとして阪神タイガースWomenでプレーして今シーズンが3年目。年を経るごとにチームでの立ち位置は変化してきた。危機感をもって全力でレギュラーを奪取した1年目。2年目は「日本一になりたい」と言い続け、全国優勝を達成しMVPにも輝いた。必要とされていると実感する今は、「チームに貢献するために常に結果を出し続けなきゃいけない」と気を引き締める。
「野球でどうやって稼ぐか、だと思うんです」
すっかりチームの、女子野球の顔となったが、まだまだマイナーな存在である女子野球の普及・発展については一家言ある。
「将来が見える基盤ができてこそ。野球でどうやって稼ぐか、だと思うんです。例えばユーチューバーは普及・発展させたいからやっているんじゃなくて、稼げるから、夢があるからやっている。だから子どもたちもなりたがる」
綺麗事として「女子野球を普及させたい」などと言う前にまず、現実的に収入が伴い、職業となることが必須だと語る。二足の草鞋を履くことなく、野球が生業になることこそが普及・発展につながるという考えだ。