球体とリズムBACK NUMBER
「僕らはただ楽しんだだけ」ハーランドが怪物になった背景「子供に余計な重圧はダメ」「選別もNG」ノルウェーの“アスリート育成法整備”がスゴい
posted2026/07/21 17:00
ハーランドが圧倒的な存在感を放ち、初のW杯ベスト8進出を成し遂げたノルウェー。その育成システムは非常に興味深いものがある
text by

井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Mutsu Kawamori
ノルウェーのアスリート育成法に世界中から注目が集まっている。
人口565万人ほどの北欧の小国は北中米W杯のラウンド16で、その前に日本を下したブラジルと対戦し、アーリング・ハーランドの2得点で2-1のスコア以上の快勝を収めた。
するとその3日後に、準々決勝で対戦するイングランド(英国)の主要紙『ガーディアン』が、こんな見出しの記事を掲載した。
ADVERTISEMENT
【順位表も優勝杯もナシ。ノルウェーは子供たちにスポーツを楽しませ、ブラジルを下すフットボールチームを築き上げた】
子どもがやりたい競技を選択、“補欠”はなし
それによると、ノルウェーでは1987年に政府のスポーツ庁が〈スポーツにおける権利〉を法律として定め(2007年に改定)、子供たちがスポーツを安全に楽しみ、重圧とは無縁に参加することを、“大人たち”が守らなければならないと記されているという。
ノルウェーの少年少女たちは、9歳までは地元クラブでしか公式戦を行えず、そこには結果表も順位表も優勝杯もない。11歳から地域の大会に参加できるが、やはりいかなるランキングも存在しない。全国大会に参加できるのは、13歳からだ。それまではとにかく楽しむことに重きを置き、ファーストチームやサブチームといった隔てもなく、うまい子もそうでない子も一緒にボールを追う。
また子供たちには自分がやりたいスポーツをいくつも選ぶ権利があり、どれほどの強度で、週に何回参加するかを選択できる。つまり、いかなるクラブも選手たちにそのスポーツにだけ専念させることはできない。ノルウェーの子供たちは、自分たち本位で好きなスポーツを心ゆくまで楽しめるのだ。
ブラジル撃破、あのヘディング弾も…
イングランド生まれのハーランドは両親の地元ブリンに3歳の時に移ると、6歳でブリンFKに入団。だがフットボールだけでなく、ハンドボールや陸上競技、クロスカントリースキーを並行してやっていた。そして14歳の時に、自らの意思でフットボールだけに専念するようになったという。
北中米W杯のラウンド16のブラジル戦で、ハーランドが決めた先制点を思い出してほしい。

