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寺地拳四朗vsオラスクアガはなぜ心震える激闘になったのか?「映像を見て気がついたんですけど…」加藤トレーナーが恐れた“名伯楽の手腕” 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2023/04/11 17:02

寺地拳四朗vsオラスクアガはなぜ心震える激闘になったのか?「映像を見て気がついたんですけど…」加藤トレーナーが恐れた“名伯楽の手腕”<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

「年間ベストバウト級」の名勝負となった寺地拳四朗とアンソニー・オラスクアガの一戦。試合後、寺地を支える加藤健太トレーナーに話を聞いた

オラスクアガ陣営が打っていた「逆転のための布石」

 結果的に寺地は8回以外のすべてのラウンドを押さえた。それでもなお想像以上に厳しい試合となった。オラスクアガはウワサ通りの大器であり、エルナンデス氏は予想していた通り手強かった。加藤トレーナーは5回を例に挙げて説明した。

「相手は5ラウンドに手を出さなかった。僕は『効いてるのかな。バテたのかな。このままいけるのかな』と思ったんです。でもあとから映像を見て気がついたんですけど、あれは休んでた。そして6、7、8に勝負をかける。実際にそうだった。僕はラウンドごとにポイントを取れているか、いないかを考えます。もし最初の4ラウンドを取られたと思ったら5ラウンドは絶対に取り返しにいかせる。でもルディはポイント以上に流れとかペースを大事にする。そっちにポイントはあげてもペースはこっちがもらうよ、みたいな。だから5回は逆転のための布石。はめられたということです」

 そう聞くと推測にすぎないが、ひょっとすると4回までの戦いも計算済みだったのかもしれない。ポイントはすべて取られてもいい。中盤以降に勝負をかけるのだ、と。そのためにも序盤戦は決定打だけは許さず、うまくしのいで寺地にできるだけスタミナを使わせようとしたとも考えられる。

「ルディは選手にディフェンスだけの練習をさせるんです。手を出さないディフェンスだけのスパーリングをする。だからオラスクアガの5回は練習通りだと思います。拳四朗にそういう練習はさせてません。だから8回、拳四朗は休もうとしたけど、オラスクアガの5回みたいにうまくいかなかった。向こうは“しのぎ方”に長けているんです」

 ジャッジは6、7回ともに寺地にポイントを与えた。有効打の数を考えれば納得の採点である。しかし6、7回で寺地は「心が折れそう」なほど追い込まれていたのだ。オラスクアガ陣営のゲームメイクは間違ってなかったと言えるだろう。

【次ページ】 「自分に足りないものがアメリカにあるのかも」

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