野望を抱きながらも、二軍担当の頃はその日の仕事をこなすことで精一杯だった。だが7年目に一軍担当になり、視界が開けた。

「金子（千尋）さんと出会ったことが、たぶんすべてですね」

　当時オリックスのエースだった金子の信頼を得て、常にキャッチボールやブルペンでパートナーを務め、オフの自主トレにも呼ばれた。

ブルペンで投げ込む金子千尋（2017年）©︎JIJI PRESS

「常に一緒にいましたね。キャンプ中の休みの日も全部。ネコさん（金子）は（帰るのが）早いんですけどね。お酒を飲まないから、ご飯を食べたらすぐ帰るので。

　キャッチボールもピッチングもずっと共にさせてもらって、すごく勉強させてもらいましたし、プライベートも含めて一緒にいる時間が長かったので、ネコさんが考えていることがほぼわかるぐらい、知識もつきました。『ネコさんだったらこう言うだろうな』と。本当にものすごくよくしてもらったので、『何か絶対に力になりたいな』と思った。ただボールを受ける側から、選手のために何か力になれることはないかなと考え始めたのが、その頃からでしたね」

　ブルペン捕手として、「裏方だけど、プロフェッショナルって絶対に大事。そうなりたい」と考えるようになった。ナイターの日でも朝から球場に入って投手の映像を徹底チェックするなど、投手を最善の状態でマウンドに送り出すための努力を尽くした。

ラオウ覚醒のきっかけも瓜野から？

　そうした姿勢が伝わり、現場の選手や監督、スタッフからは信頼を寄せられたが、フロントからの位置付けはあくまでも「ただの裏方」で、「お前は元プロじゃないから」と言われて唇を噛んだこともあった。

　それでも、選手、チームのためになることは何でもした。ブルペン捕手の仕事以外にも、野手の自主練習に付き合って打撃投手を務めたり、広い人脈を活かして選手にトレーナーなどを紹介することもあった。一昨年、本塁打王に輝いた杉本裕太郎に、打撃覚醒のきっかけを与えた根鈴雄次氏を紹介したのも瓜野だった。

「『面白いところがあるから、もしよかったら行ってみて。ラオウに合うと思うんだよね』と言われて。その時ちょうどバッティングに悩んでいたので、試しに行ってみようと思って、紹介してもらいました」と杉本は振り返る。

昨季の日本シリーズでMVPに選出された杉本裕太郎　©︎Nanae Suzuki

　“陰の戦力”の支えもあり、オリックスは昨年パ・リーグ連覇と日本一を達成した。その日本一の翌日、瓜野は愛着あるオリックスでの13年間の裏方生活に区切りをつけた。

　その後、ソフトバンクからの誘いを受け、新天地での挑戦を決めた。

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