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「当初は凍った湖や川の上で行っていた」カーリングで使われる“ブラシ”は時代とともに驚くほど変わっていた「スイープ力の高いトップ選手は…」
posted2023/04/09 17:00
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
AFLO
「ヤーーーップ!」
司令塔であるスキップからの号令を受け、一斉にゴシゴシゴシゴシ。ストーンをより遠くまで滑らせるために、スイーパー2人が懸命に氷上の凹凸(ペブル)をこすって溶かす。女子カーリングチーム「ロコ・ソラーレ」の活躍で、この光景はすっかりお馴染みとなり、自宅のお掃除中に真似する人が続出した。
そんなスイーパーたちが手にする道具はカーリングブラシと呼ばれる。ただし、トップ選手が使用するモデルは「ブラシ」なのに毛がない。接氷面の手触りは壁紙やテーブルクロスのようだ。その理由を日本カーリング協会の小高正嗣さんが教えてくれた。
「カーリングは16世紀ごろにスコットランド、または北欧で始まり、当初は凍った湖や川の上で行われていました。当然、氷の上には霜や枯れ葉が落ちています。これを取り除くために、箒やデッキブラシが使われていました。だから今でも『ブラシ』で『スイープする(掃く)』と呼ぶんです」
トップ選手はパッドを毎試合交換
昔のスイーパーは、長い箒で掃きながら氷の上を移動していたという。“レレレのおじさん”スタイルである。そこから屋内での競技が一般的となり、豚や馬の毛を使ったブラシタイプや、先端が黒板消しに近いタイプが登場。現在では、ハンドル(柄)にヘッドを取り付け、その先端に付け替え可能で氷を傷めにくいナイロンなど化学繊維製のパッドを装着する形状が主流となった。
「ナイロン素材は目が詰まりやすいので、パッドは消耗品です。スイープ力の高いトップ選手ともなれば、1試合ごとに交換します」
まるでお掃除ごとにウエットシートを取り替える“クイックルワイパー”状態だ。このパッドのお値段は、1枚3000円ほど。試合ごとに交換していたら財布の中身が心配になるが、スイープ力の低い一般プレーヤーならば1シーズンごとの交換で問題ないそうだ。
ブラシの進化はパッドだけではない。ハンドル部分もかつては木製や金属製だったが、現在のトップモデルにはカーボン素材が使われ、大幅に軽量化した。ワールドユニバーシティゲームズ日本代表にも提供する国内唯一のカーリングブラシメーカー、グラファイトデザイン社の「ice Magic GOLD」は、ハンドルのみで1本1万9140円(税込)~。長さ約120cmで、重さわずか100gの高級ハンドルにウエットシートを付けてゴシゴシすれば、きっとフローリングも氷のようにピカピカになる!?