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相手セカンドが困惑「えっ、セーフ?」大学生・周東佑京、セカンドゴロが余裕でヒットの“伝説”…WBCで世界が驚いたスピードスターの原点
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2023/03/31 17:25
WBC準決勝メキシコ戦。サヨナラ打を放った村上宗隆とサヨナラホームインした周東佑京が抱き合う
やっぱりな……とも思った。三拍子とまではいかなくても、飛び抜けた長所を持った個性豊かな選手たちが全国から集まった「個性派集団」が、すごく似合っていて、居場所として、スッとこちらの胸に落ちた。
その苫小牧の球場で、合わせると3、4回、周東のプレーを見た。
内野が土のグラウンドで、試合が始まるとすぐに荒れてしまうような状態だったから、打ち損じの内野ゴロでもいつイレギュラーするかわからない。
はっきりとした記憶がある。
彼が打った二塁正面のゴロ。まあまあいい当たりの打球が、荒れたグラウンドでジグザグになって二塁手に向かって飛んで、危なくて前に出られない二塁手が待って捕って投げようとしたら、打者走者・周東佑京がもう一塁ベースを駆け抜けていたことがある。
あ然とした二塁手が、投げる姿勢のまま、ウソだろう!と後ろにひっくり返った。
プロ野球スカウト「あの頃は左打ちばっかりで…」
「足」ばかりが話題になる周東だが、学生当時の彼は、甘く入れば右中間のいちばん深い所まで持っていくし、警戒されて外攻めをされると、一転、絶妙な流し打ちでレフト頭上を襲う広角打法の「怖いバッター」でもあった。
そして、2017年の育成ドラフト2位指名でソフトバンクに入団する。
「足の速さが飛び抜けていて、打つ、守るは僕らの目からすると、そこまでじゃない。タイプとして“育成”にぴったりみたいな選手だったっていうことでしょ」
かなり以前のことだが、あるスカウトの方と話していて、「あの選手はなぜ育成で……?」という話題になり、その対象が周東にも及んだことがある。
「あとは、あれですよ、右投げ左打ち。周東の頃は、どの球団もセカンド、ショートを守れるのが左打ちばっかりで。アマにも右打ちのいいのが、なかなかいなくて、苦労しましたから」
周東が育成指名された2017年の選手名鑑で、ちょっと調べてみた。