すでにこのときの松坂はボストン・レッドソックスに所属するメジャーリーガーとしての参加だった。米本土での休日には投手陣を全員引き連れて食事から、ゴルフのアテンドまで、全てポケットマネーで面倒を見て、リーダーとしての存在感を遺憾なく発揮した大会でもあった。

「本当に助かりました。野球のアドバイスでも僕がはっきり覚えていることがあって、それはロジンの使い方でした」

　WBCでは必ず問題となる日米の使用球の違いとその対策へのアドバイス。

「いまは完全にダメですけど、当時は暗黙の了解で日焼け止めとかを指につける対策もあって、松坂さんが『こういうのもあるよ』って教えてくれた気もします。でも一番覚えているのは、滑り止めのロジンが日本はサラサラしているけど、メジャーのはあまり手には付かない。でもそれをちょっと汗と馴染ませるとしっとりするから、そういう風にやるといいよ、と。それがすごく参考になった記憶があります」

2009年WBC決勝に先発し、7回2/3を2失点でおさえた岩隈　©︎Naoya Sanuki

　この大会で岩隈は3試合に先発し2勝をマーク。決勝の韓国戦では8回途中まで韓国打線を4安打2失点に抑える好投で、2大会連続のMVPに輝いた松坂と共に日本代表の連覇の立役者となった。

「表彰式で並んでいるときに松坂さんが『クマがMVPだよ』って言ってくれて、それも嬉しかったですね。松坂さんに言ってもらえるなんて……。ああいうピッチングができたのも、松坂さんが環境を整えてくれて、ゲームに入りやすい形でやらせてもらえたことが大きかった。そのお陰で自分の持ち味を出してピッチングできたなと思っていたので、本当に嬉しかったです」

2009年WBCで2大会連続MVPに輝いた松坂　©︎Naoya Sanuki

松坂の存在は、日本の投手のレベルアップの原動力に

　実は松坂と岩隈の日米通算成績は170勝108敗でピタリと並んでいる。

「エッ！　全然、知らなかった。なんか、並べたこと自体が嬉しいです。でも、追い付いたなんて思ってないですよ！　経験が違いますから。ただ一緒の時代に、投げ合いもさせてもらいましたし、同じメジャーの舞台にも立ってやらせてもらって、終わってみたら同じ数字だったっていうのは……何でしょうね……何て言葉に表したらいいのか分からないですね」

　ただ確実に言えることがある。

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