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「マフィアに入った弟をボコボコに」引退ヒョードルの“内なる激情”とは? 人類最強と呼ばれた男の逸話「ロシア軍の許せない先輩を…」
posted2023/02/12 17:03
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Susumu Nagao
「ワンサイドで終わってしまい、自分が期待した試合は見せられなかった。ただ、すごく幸せな気持ちです。みんなが応援してくれ、20年以上の選手人生をともに歩んだ猛者たちがここに集ってくれた。コーチやチームメイトたちも、みなさんありがとう」
青いオープンフィンガーグローブをマットに置いて引退セレモニーに臨んだエメリヤーエンコ・ヒョードルは、いつもの落ち着いた口調で語り始めた。現地時間2月4日に米カルフォルニア州イングルウッドのキア・フォーラムで開催された『Bellator 290』。王者ライアン・ベイダーにヒョードルが挑んだBellator世界ヘビー級タイトルマッチは、ベイダーが1RTKO勝ちで3度目の王座防衛に成功するとともに、リベンジに燃えるヒョードルを返り討ちにした。
ロシア人のヒョードルに捧げられた絶大なリスペクト
両者は2019年1月にBellatorで初めて拳を交わし、ベイダーが1RでKO勝ちを収めている。以前からベイダーとの再戦をファイナルマッチとして見据えていたヒョードルは、大会前日の会見でも「勝っても負けても終わりにする」と宣言していた。とはいえ、かつて“60億分の1の男”といわれたヒョードルも46歳。肉体的な衰えは隠せない。ヒョードルが右フックを繰り出しても、空を切るばかり。対照的にベイダーの右を被弾してよろける姿に、時の流れを感じずにはいられなかった。
時間が経つにつれ弱っていく一方のヒョードルに、とどめを刺したのはベイダーのパウンドだった。ほぼ無抵抗のままそれを浴び続けたため、最後はレフェリーに試合を止められた。その瞬間、MMAファイターとしてのヒョードルの23年に及ぶヒストリーにピリオドが打たれた。
もっとも、この日のハイライトは一方的だった試合内容よりも、そのままケージの中で行われた引退セレモニーだったように思う。マーク・コールマン、ホイス・グレイシー、ダン・ヘンダーソン、ジョシュ・バーネットらヒョードルとともに黎明期のMMAシーンを築き上げた往年のレジェンドたちが勢ぞろいしたシーンは、壮観というしかなかった。