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セッターも海外挑戦すべき? バレー界の“仮説”を覆す関田誠大のスゴい進化とは…“大型補強”ジェイテクトで光った多彩なトスワーク 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byYUTAKA/AFLO SPORT

posted2022/12/24 11:00

セッターも海外挑戦すべき? バレー界の“仮説”を覆す関田誠大のスゴい進化とは…“大型補強”ジェイテクトで光った多彩なトスワーク<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO SPORT

(左から)柳田将洋、西田有志らと共に大型補強の目玉としてジェイテクトに加入したセッター関田誠大。Vリーグでの巻き返しを予感させる天皇杯制覇だった

 翌日行われた東レアローズとの決勝戦は、ジェイテクトが武器であるサーブで主導権を握り、一方的な展開となった。関田は何かから解放されたかのように、正確さと大胆さを兼ね備えたトスワークで攻撃陣全体をバランスよく活かし、チームのアタック決定率は60.9%に及んだ。

 東レのセッター酒井啓輔は「もっと相手ブロッカーとの駆け引きを勉強しないと。それこそ関田さんのように。関田さんはセッター主導でバレーをしているように感じた。スパイカーに合わせる能力ももちろん高いんですけど、『これを打てよ』みたいな、強気なトス回しに感じました」と語っていた。

 決勝で関田が示した視野の広さと精度の高さ、大胆さ、そして自信。それは、昨季世界トップリーグの一つであるポーランドリーグを経験して帰ってきた関田が日本代表でも感じさせた成長だった。もともとコートの中央からの攻撃を巧みに使うセッターだったが、今年は以前にも増してミドルブロッカーを積極的に使って活かし、日本の攻撃の幅を広げた。

 海外経験によってどんな変化があったのか、知りたいと思ったが、本人は「自分ではよくわからないんです」と苦笑する。

 スパイカー陣が感じていたのは“自信”や“余裕”だった。日本代表主将の石川祐希(パワーバレー・ミラノ)は、「一番変わったなと感じるのは“自信”。自信を持ってトスを上げているから、アタッカーとしても打ちやすいし、勝負できるトスがくる。トスワークに関しても非常に意図が感じられます」と語っていた。

ライバルを刺激する関田の進化

 そして、関田の変化を誰よりも感じていたのは、同じセッターの大宅真樹(サントリー)だった。

「昨年までは、頑張れば手が届く位置にいるって勝手に思っていたんですけど、今年代表で一緒にやって、『あ、敵わないな』と思ったことが何回もありました。もともとトスの質や精度がすごくいい選手でしたけど、今は本当にブレがない。その中にトリッキーさがあるし、なんて言うか、奇襲が奇襲じゃない。奇襲って、得点にならなかったりミスした時にガタガタと崩れてしまうんですけど、関田さんの場合は毎回うまくはまる。たぶん彼は奇襲とも思っていなくて、技術もあるし、そこを使えるから使っているだけだと思う。

 例えば、難しいところからのクイックだったり、僕が『そっからそこに上げる?』と思うようなトスを精度高くやっていた。世界選手権の最後の(フルセットの末惜敗した)フランス戦も、関田さんのおかげであそこまで戦えたと僕は思っています。自分をレベルアップさせるには、国内だけじゃできないこともあるんだなと感じました」

 大宅の中で海外リーグへの興味が「0から1に」変化したと言う。

「関田さんがこの1年ですごくレベルアップされていたので。僕は今まで、海外リーグの経験って、セッターには必要ないと思っていたんです。代表のことを考えると、僕は日本人と一緒に世界で戦うので、海外のスパイカーと合わせたとしても、その先はないものだから、行く意味はないと。日本と海外の選手は全然違って、海外のスパイカーは、器用じゃないけど、この辺に上げとけば決めてくれる、みたいな人が多いから、それってセッターとして自分のスキルアップになるのかな?と思って。だから関田さんが海外に行って、どうなるんだろう?とすごく興味があったんですけど、僕の想像と全然違うレベルアップをしていました。

 それで見方が変わりました。今まではコンビ重視で、自チームしか見ていなかったんですけど、海外に行くと相手は高いブロックが当たり前で、移動も速い。その中でやるには、スピードと精度も身につけなきゃいけないし、いろいろな面でかなりのスキルアップになる。相手が海外の選手ということが、すごくプラスなのかなと感じました」

 関田が見せた成果が、他にも多くの人の考え方を変えたかもしれない。

【次ページ】 「セッターは海外に行っても…」という見解を覆す

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