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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「失敗しながら前に進まないといけない」斉藤和巳も賛同する“高校~大学生、社会人や独立リーガー大集合”のトライアウトリーグとは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2022/12/16 11:00
ソフトバンクのコーチとなった斉藤和巳氏は、「ジャパンウィンターリーグ」の理念に賛同している
沢村賞を2回獲得した平成を代表する投手としては、野球界の変貌に複雑な思いがあるのだろう。
「やっぱり先発投手は沢村賞を目指してほしいですね。今は中6日のローテーションなので、それで規定投球回数にかからないのはどうかな、とも思います。
一方で、今はリリーフがしっかりしているチームが優勝する可能性が高い時代ですが、だったらもっと救援投手の年俸が高くてもいいのでは、とも思います。救援投手の比重が高くなっているのに、相変わらず先発投手の方がメディアでも注目度が高いのはどうなのかな、と思いますね」
「投げたい、もう一度マウンドに立ちたい」
2003年から2006年までの4シーズンで斉藤氏は64勝を挙げ最多勝2回、最優秀防御率2回、最高勝率3回、奪三振王1回に輝いた。しかし故障のために2007年を最後に一軍のマウンドから消えた。この間、どんな思いで過ごしていたのか?
「手術、リハビリはしんどいですけど、基本的に誰かに言われたわけじゃなく、自分で手術、リハビリを選択したわけです。愚痴や不満の感情が自分の心の中で大きくなりすぎたらやめればいいんだし、僕はそれよりも『投げたい、もう一度マウンドに立ちたい』という気持ちの方が大きかった。その繰り返しでしたね。『いやになったらやめればいいんだ』といつも思っていました。そういうシンプルな考え方でした。
最終的に引退したのは、十分時間を貰いましたし、これ以上ずるずる引き延ばすことはできないと思ったからです。引退する前の年には、ある程度覚悟をもってシーズンに臨んでいました。そしてその結果として引退したわけですね」
「やっぱり斉藤さんの体はずば抜けている」
グラウンドに出てスタッフとキャッチボールをする斉藤和巳氏。上腕の大きな筋肉がダイナミックに動き、回転の良いボールが指先から離れていく。5年以上も故障に苦しんだとは思えない。実にのびやかな動きだ。
横で見ていた関係者は「やっぱり斉藤さんの体はずば抜けている。あんな凄い球を投げるにはこういう肉体が必要なんだ」と語った。
栄光と苦境をともに経験した斉藤コーチは、どんな指導者になるのだろうか。
「秋季キャンプで本当に久しぶりにホークスの投手を見ましたが、変わったなと思いましたね。ソフトバンクという大きな組織ですし、新しいものも取り入れていくので当然なんですが。
ただ、投手は僕らのころと比べて、体力がだいぶ落ちたなと思いました。秋季キャンプに来ている投手で1年通して投げたのは1~2人しかいない、それ以外は基本的には1年間投げ切っていませんが、やはり体力がない。体力も技術の一つですが、それがないですね。
投手はやはり1年間トータルで投げて成績を残して、それを数年間続けてこそ評価されます。1年のうち数カ月だけ良くて後はダメでした、では信頼を得ることはできません。
これまで彼らが投げているのを外から見てきましたが、中に入ってみて筋力を含めた体力のなさが、持ってるポテンシャルを活かしきれない原因になっていると思いました。みんなポテンシャルは高いので、それを技術に結び付けることができればいいと思います」