新刊ドラフト会議BACK NUMBER
『オリンピックを殺す日』東京オリンピック後の世界で、私達が自問自答すべきこと。
text by
額賀澪Mio Nukaga
photograph bySports Graphic Number
posted2022/11/15 07:00
『オリンピックを殺す日』堂場瞬一著 文藝春秋 1980円
オリンピックは2021年の東京で壊れた。いや、とうの昔に壊れていて、それがさらけ出されたのが東京大会だった。「オリンピックはさまざまな問題を孕んでいる」などというレベルではなく、修復不可能なまでに壊れてしまっているのだと。
東京オリンピック後、そのことが何らかの形で総括・精査されると期待していた。ところが閉幕から1年以上が経ってもその気配すらない。精々、スポンサー絡みの汚職事件が明るみに出た程度だ。
『オリンピックを殺す日』が発売された時、やっとその日が来たのだと思った。
オリンピックの裏番組のように開催されることになった謎のスポーツ大会「ザ・ゲーム」。スポーツ新聞の記者はその正体を取材するが、実態はなかなか掴めない。こんな大会に出場するアスリートなんていない……はずなのに、選手は次々と参加表明をしていく。得体の知れない大会がどうして選手を惹きつけるのか? その理由を探し求める中で、読者である私達は自分の罪深い勘違いに気づく。