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『ふたつのオリンピック 東京1964/2020』
『菊とバット』著者が青年時代に見た、
東京の街、怒濤の半世紀の記録。
posted2018/12/05 00:00
text by
鹿島茂Shigeru Kashima
photograph by
Sports Graphic Number
東京オリンピックを二年半後に控えた一九六二年一月、北カリフォルニアの小都市出身のアメリカ空軍諜報部員ロバート青年は府中の空軍基地から私鉄と地下鉄を乗り継いでやってきた数寄屋橋交差点で驚くべき光景を目にする。「まず目を奪われたのはひとの群れだった」「次に目についたのは建設工事だった」「激しい混雑と交通渋滞。セメントの臭いが街中を覆いつくし、あらゆるひとの五感を猛攻撃していた」
こうして、一瞬のうちに青年は劇的な変化を遂げつつある東京の虜になり、キャノン機関出身者がつくった六本木の外国人用ナイトクラブ「クラブ88」に出入りするかたわら英会話学校の教師となり、日本の日常生活になじんでいく。