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ヤンチャ集団を“甲子園16強”に育てた「北大津の名将」が現場復帰→就任2年で滋賀制覇「おとなしい子が多い。今はとにかく“褒める”」 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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posted2022/10/07 06:24

ヤンチャ集団を“甲子園16強”に育てた「北大津の名将」が現場復帰→就任2年で滋賀制覇「おとなしい子が多い。今はとにかく“褒める”」<Number Web> photograph by Fumi Sawai

秋季滋賀大会・準決勝に勝利して初の近畿大会出場を決めた彦根総合高校。勢いそのまま初優勝を果たし、宮崎監督(左から2人目)は安堵の表情を浮かべた

 昨秋以降、宮崎監督の赴任を知って入学してきた選手が主軸を張ってきた。有望な選手が揃っているなら勝って当然……と思うかもしれないが、そう簡単にはいかないのが野球である。

 今春の滋賀大会の準決勝で立命館守山高に2-7で完敗した直後、宮崎監督はこんな本音を漏らしていたことがある。

「何を言っても返ってくるものがないんですよね。1年生から試合に出ている選手も覇気がないというか……。ホンマに、次の試合で(控え部員が多かった)3年生とメンバーを替えてやろうかと思うくらいですわ」

 夏の滋賀大会でも初戦で伊香高に3-5で敗れ、チームがなかなか伸びきれないことを嘆いていた。

 新チームが結成された8月以降は、実力校を相手に投打で圧倒する試合が増え、「それも自信になっている部分はある」と指揮官はうなずく。しかし、秋の滋賀大会の組み合わせでは夏の甲子園で4強入りした近江高と対峙するブロックに入った。

「準々決勝で(近江に)勝ったとしても、次は相手が勝ち進めば滋賀学園と対戦する可能性もありました。最初はキツいブロックやなと思いましたけれど、コイツらを鍛えるならいいクジやなと思ったんです。仮に負けたとしても、そういう学校と公式戦で戦えるのはいい経験になるし、夏に向けて何かが残る。そういう面ではホンマに良かったと」

近畿大会が懸かる大一番で先発を託したのは…

 対戦を熱望していた近江が3回戦で敗れたことで、準々決勝は彦根東高との顔合わせになったが、その試合が延長15回にも及ぶ大激戦になった。

 2-2のまま延長戦に入ると、13回表に彦根東が4点を奪って試合が決まったかと思われたが、その裏に彦根総合が4点を返して再び同点に。14回にお互い1点ずつ取り合い、再び15回に彦根東が2点を勝ち越したが、またもや彦根総合が3点を奪い返して逆転サヨナラ勝ち。まさに“死闘”と言ってもおかしくない一戦をものにした。

 宮崎監督は続く準決勝の近江兄弟社戦で、エース野下の代わりに背番号10の勝田新一朗に先発を託した。

「彦根東戦の9回に勝田が緩い変化球を打たれて同点にされた場面があったんです。なぜあの場面で一番自信のあるストレートで行かんかったんやって、本人が後悔していたみたいで。じゃあ汚名返上せえ。明日はお前が先発やって。その悔しさが分かってるんやったら投げてみろと。そういう気持ちで送り出したんです」

 勝田は宮崎監督の期待に応えるように近江兄弟社打線を7回をゼロで抑えて、後をエースの野下に託した。決勝戦は、勝田の力投に刺激を受けた野下が1失点完投勝ち。宮崎監督の導きによって、彦根総合は熾烈を極める滋賀大会をついに制した。

「2人以外にも(140キロを超えるストレートが武器の)武元(駿希)もいますし、3人とも自分がエースという気持ちでやってくれています。『1番』はひとつしかありませんけれどね」

【次ページ】 「選手を信じること。奇策なんてない」

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