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「引いて守るのは損、仕掛けがどんどん早くなり…」将棋界のシメオネ・渡辺明名人が盤上の攻防で例えた、W杯を勝ち抜く戦術論
posted2022/09/30 11:00
text by
渋谷編集室 with ABEMASports Graphic Number with ABEMA
photograph by
Kiichi Matsumoto
――渡辺名人が欧州サッカーを見るようになったきっかけは?
渡辺 2011-2012シーズンからですね。ちょうど息子が小学校のサッカー部に入って、ルールもよくわからないような状態だったので、テレビを見せるのが一番手っ取り早いだろうということで。それまでは僕自身も、日本代表戦をやっていれば見るような、一番ライトな層だったんです。香川真司選手が所属していたマンチェスター・ユナイテッドを見るようになって、すっかり欧州サッカーを視聴することがルーティン化していきました。
――4級審判の資格も取得したそうですね。
渡辺 小学生の試合では“お父さん審判”の需要があるんですよ。取得したら、毎年、FIFAの日本語版ルールブックが送られてきて。それを読むのが楽しかった。サッカーは将棋と違って、わりと頻繁にルールが変わる競技です。キックオフ時にボールを前に蹴りださなくてもOKになったり、ゴールキックをペナルティエリア内で受けられるようになったり。
小学生だと、ゴールキックの飛距離も出ないし、相手もそれを狙っているから、どうしてもペナルティエリア内でボールを受けたくなっちゃうんです。だからルール変更前は、何度もゴールキックをやり直しさせたことがあります。これは“お父さん審判あるある”です(笑)。
シメオネに惹かれる理由
――イチ押しのクラブ、選手・監督はいますか。
渡辺 アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督が好きですね。アトレティコは、レアル・マドリーやバルセロナほど資金がないのに、シメオネ監督の就任以来、2013-14シーズンと2020-21シーズンのリーガを制した。UEFAチャンピオンズリーグでも2度決勝に進んでいます。これは監督の手腕が優れているからこそできること。どんな人なんだろうと気になって、どんどんシメオネさんに惹かれていったんです。
――シメオネ監督の著書にあった「選手のモチベーションを高めたり、選手をコントロールするときに、聞こえの良いフレーズは無意味だ」という趣旨の言葉に、影響を受けたとか。