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「あの場面であのショットを打つことが理解できない」“皇帝”フェデラーは11年前ジョコビッチとの一戦で何に憤っていたのか? 

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内田暁

内田暁Akatsuki Uchida

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photograph byGetty Images

posted2022/09/22 17:01

「あの場面であのショットを打つことが理解できない」“皇帝”フェデラーは11年前ジョコビッチとの一戦で何に憤っていたのか?<Number Web> photograph by Getty Images

9月23日から行われるレーバーカップでの引退を表明したフェデラー。“皇帝”と呼ばれ絶大な強さを誇ったフェデラーが失望をあらわにした試合があった…

30歳のフェデラーと24歳のジョコビッチ

 G.O.A.T.――Greatest Of All Time――。それが、ロジャー・フェデラーに与えられた称号である。

 クラシカルなサーブ&ボレーヤーに憧れた少年は、優美な技とスイス時計に例えられるほど精緻な戦術を体得し、04年2月に初めて世界ランク1位に座した。その後、長く続いたラファエル・ナダルとの2強時代を穿ったのが、ノバク・ジョコビッチである。幼少期を爆弾の降るセルビアで過ごした“第3の男”は、11年7月に悲願のウィンブルドン制覇と同時に世界1位も奪取。USオープンにも第1シードとして、野心をたぎらせて挑んでいた。

 かくして、当時30歳のフェデラーと24歳のジョコビッチは、USオープン準決勝で、24度目の対戦を迎える。過去の戦績はフェデラーが14勝9敗でリード。ランキングはジョコビッチが上だが、実績や人気の面では、フェデラーが大きく上を行く。心理的にはむしろジョコビッチがチャレンジャー――それが11年9月10日のニューヨークで、ネットを挟む2人の関係性だった。

フェデラー優位で2連続のマッチポイント

 第1セットを競り勝ったフェデラーが第2セットも制した時、観客の多くは試合の行方は決したと思っただろう。

 だが諦めを知らぬ新王者は、試合が進むにつれリターンの精度を上げ、熱戦を望む2万人の観客の心の動きも読みつつ、虎視眈々と反撃の機を窺っていた。

 第3セットはジョコビッチが早々にフェデラーのサーブを破り、セットを奪うと同時に拳を振り上げ、観客を煽った。続く第4セットも奪ったジョコビッチが、今度は優位に立ったかと思われた。

 しかし、そのようなありきたりなシナリオをフェデラーは拒絶する。ファイナルセットでは、相手を左右に振りまわし、早いタイミングでオープンコートに定石通りのショットを叩き込んだ。

 並走状態の均衡がついに崩れたのは、ゲームカウント4-3の第8ゲーム。攻め焦ったかのようなジョコビッチのフォアハンドがラインを割り、フェデラーがブレークに成功した。そして次の自身のサービスゲームでも、フェデラー優位の流れは続く。

 試合開始から3時間33分――。

 ついにフェデラーは2連続のマッチポイントへと到達した。

【次ページ】 スイス時計のように精緻に構築された世界観が…

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