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「実はいま、野球界で噂のベルトがあるんです」川上憲伸の“ある悩み”が生んだベルトは、高額でもなぜ多くの選手から愛されるのか?
posted2022/08/21 20:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
KYODO
「よくもまあ、毎度いろいろ見つけてくるもんだ」と筆者がいつも感心する当連載の担当者が、今度はこんなことを言い出した。
「次は野球のベルト、取材しません?」
――いやいや、ベルトなんて、と却下しようとすると担当者は不敵に笑い、「実はいま、野球界で噂のベルトがあるんです」と言うのだ。
その名はコアエナジー3 野球ベルト(税込1万450円)。野球ベルトは3000円前後が主流だから正直高いが、同商品を開発したコア・テクノロジー(株)の専務取締役、河村隆史さんは胸を張る。
「NPBでは現在約700人に使っていただいていますが、これは全選手の8割強に相当します。東京五輪で金メダルに輝いた侍ジャパンでも、26人中23人が弊社のユーザーでした。侍ジャパンでは本来、契約メーカーの用具を使うという暗黙のルールがありますが、多くの選手が“これじゃないと調子が出ない”とコアエナジーを選んでくださったのです」
それにしてもコアエナジーは、なぜこれほど多くの選手に支持されるのか。
それは端的に言えば、ベルトを巻くことで姿勢が格段によくなるからだ。腰椎が安定して上半身と下半身の連動性が向上すると同時に、四肢の可動域が大きく広がるのだという。
川上憲伸の“ある悩み”が生んだ発明
コアエナジーの誕生には、ある日本人メジャーリーガーが関わっている。2009年から2年間、ブレーブスに在籍した川上憲伸さんだ。
「コルセットをつけて投げると、やっぱり違和感があって。なにかいいものないかな?」
腰痛に悩む川上さんの声を受け、当時の専属トレーナー・寺本佑介さん(現・同社技術顧問)はコルセットを兼ねたベルトの開発に乗り出す。従来「切れなきゃいい」程度に思われていたベルトに機能性を盛り込むという柔軟な発想が、大ヒットを呼び込んだ。コアエナジーは自動車の座席にも使用される、強靭さと伸縮性を兼ねたパワーメッシュという生地を6枚重ねてつくられている。
当連載ではいままでフェイスガードやアイブラックといった野球用具を取り上げてきたが、それらはアメリカで生まれ、日本に伝わったものだった。だが受け身の日本勢にあって、コアエナジーは大いに気を吐いている。
「例えばドジャースでは前田健太投手の影響で、多くの選手がコアエナジーをつかい始めています。縮小する日本市場にとどまらず、積極的にアメリカに打って出たいですね」
これぞ、メイドインジャパンの意地である。