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羽生結弦は「伝える人」…あの共演から10年、親友・指田フミヤが評する“表現者”としての凄みとは?「演技そのものが、言葉を発している」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2022/07/23 17:00
羽生結弦のエキシビジョンナンバー『花になれ』の作詞作曲した指田フミヤ氏。親友でもあるシンガーソングライターが明かす、表現者としての凄さとは?
出会った頃から、「彼のことはアーティスト・アスリートと思っている」という指田。
「羽生選手の演技は、スポーツという枠を超え、見ている人たちに希望を与えようとしていますし、前向きな姿勢を示しているなと感じます」
それはエキシビションのプログラムだけに限らない。今回の北京五輪でのSPやフリーの演技からも感じたことだ。
「競技においては審査員がいて、すごく細かなところまで採点されているので、エキシビションとは違った緊張感があると思います。ただ、ミュージシャン的な視点でいうと、“音を奏でる”という点においては、僕の視点だと競技もエキシビションの演技も同様に見えています。羽生選手はそのプログラムを通して一番伝えたいことはもちろん、そこに至るまでの過程をも丁寧に滑っていて、大切にしているように感じます」
「指揮者のようにも見えました」
今季SPで演じる『序奏とロンド・カプリチオーソ』について、羽生は「具体的な物語や曲に乗せる気持ちが強くあるプログラム」、「エキシビションのように感情を込めて滑ることができている」と語っている。
「アイスショーで共演したときや観客として見たときにも感じたんですが、彼はエキシビションのプログラムをとても大切にしていて、気持ちの作り方やプログラムにどのように感情をのせるのかというところに妥協がない。一音一音の解釈はもちろんそうですが、今季のSPも自分の感情をのせて、ストーリーテラー的に自分が表現するもの、人に伝えていくという魅せ方が、より洗練され、アップグレードしていると感じました。だからこそ、この曲が持つ世界観というものも表現できているなと感じます。
あと、録音した音源を流しているのに、まるで生演奏で演技しているようにも感じられましたね。そして、彼がまるで指揮者のようにも見えました」