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今も消えない“フェイクな印象” 我那覇和樹を襲った「ニンニク注射」報道とドーピング冤罪事件を絶対に忘れてはいけない理由

posted2022/07/16 17:01

 
今も消えない“フェイクな印象” 我那覇和樹を襲った「ニンニク注射」報道とドーピング冤罪事件を絶対に忘れてはいけない理由<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

オシムジャパンに選ばれていた当時の我那覇和樹

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木村元彦

木村元彦Yukihiko Kimura

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Tamon Matsuzono

 かつての日本代表、あの時と今――。我那覇和樹が巻き込まれた“ドーピング冤罪事件”の経緯と、41歳となった今の彼に話を聞いた(全2回の1回目/後編へ続く)。

 我那覇和樹はキャリアの6つ目のチームとして大分のジェイリースFCを選んだ。所属するカテゴリーは九州リーグで、これはJ1、J2、J3、JFLに次ぐ日本国内の5部リーグに相当する。今年9月で42歳を迎える元日本代表は、巻誠一郎、玉田圭司、大黒将志、中村憲剛ら同学年の選手がスパイクを脱ぐ中、あくまでも現役にこだわり続けた。

 昨年、北信越リーグの福井ユナイテッドFCを契約満了で退団した後、私はその去就に注目をしていたが、同じく福井に所属していたFW宮地裕二郎が先にジェイリースFCに移籍を決めたことで、一気に動き出した。

「本当に謙虚で優しい人なんです」

 2トップを組んでいた宮地が、ぜひまたガナさんとやりたいとチームと本人に強く薦めたのである。宮地は大分トリニータユース出身、東京学芸大学でキャプテンを務めて2020年に福井に入団し、そこで我那覇と出逢っていた。

「僕は確かに大学でキャプテンをしていましたが、病気とケガで4年生のときはほとんどサッカーが出来ていなかったんです。それでも5月に入団が決まったんですが、キャンプもやっていなくて正直これから大変だと思っていたんです。ところが、ガナさんがすごく気さくに声をかけ続けてくれて、他の選手とコミュニケーションが取れたんです。それでチームに溶け込むことができました」

 ただでさえ大きな緊張の中にいる22歳の新人が、シーズン中にこれからコンディションを上げていかなくてはならない。プロとしてライバルとなりうる同じポジションの人間とはあえて交流を持たない選手も少なくないが、人の痛みを思い遣れる我那覇は、17歳年下の選手がやりやすい環境をさりげなく作っていった。宮地はやがて豊富な運動量でチームを支える不可欠な存在になっていく。

「J1の川崎フロンターレでバリバリプレーしていて、日本代表でも活躍されて、しかも自分よりもひとまわり以上も年上。なのに本当に謙虚で優しい人なんです」

 折り目正しく誠実な我那覇の人柄に心酔した宮地は、ジェイリースFCに入団が決まった段階でチーム側に強力なプッシュをした。

「パスもピンポイントで欲しいところにくれるし、サッカーセンスがずば抜けているガナさんとプレーすれば自分も成長できる。ずっと一緒にやりたいと思っていたので勝手に推薦しました」

我那覇さんて、あのニンニク注射を打った人?

 宮地の思いに加えて、チームの強化担当も地域サッカーチャンピオンズリーグのピッチに立った我那覇のプレーを見てオファーを即決した。

【次ページ】 冤罪事件に巻き込まれたのは、2007年のこと

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